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#東京悪女伝説 Vol.6

東京悪女伝説:「私よりイイ男との結婚なんて許せない」ライバルの女の悪意が、狼煙を上げる。

※本記事は、2016年に公開された記事の再掲です。当時の空気感も含めて、お楽しみください。


絶世の美女ではない。だけどなぜか噂が絶えない女"サエコ”。彼女にまつわる十人十色の女たちの噂話。

前回まで、「顔は大して変わらない」サエコの同期"さとみ”サークル時代の女性格付けで、No2を言い渡された"アン”サエコの会社の5つ上の先輩・"靖子”が、嫉妬をだだ漏れに、ねじれた感情を垣間見せた。一見従順な後輩・"奈々”も何だか、したたかである。

だが、サエコの元カレを旦那に持つ、スポーツインストラクターの"聖子”の勝因解説により、サエコも決して盤石ではないことが露呈してきたが・・・

役者は揃った・・・


役者は揃った。サエコを中心に、5人の女たちが繰り広げる攻防戦。

身近な女の、大富豪との男性との熱愛発覚。

その時、女たちは何を思うのだろうか?池に投げ入れた小石の波紋のように、一人の女の熱愛発覚は、女たちの心をざわめかせて・・・

「私よりイイ男と結婚するなんて許せない。」動き出す女たちの悪意。それぞれの陰謀が狼煙をあげる。

ねぇ?聞いた?サエコちゃんの彼氏・・・あの会社の社長と付き合ってるんだって!



「そこに立派な水槽があったから高価な錦鯉に見えただけのこと。すくってバケツの中に出してみれば、すぐにそれが雑魚(ざこ)とわかるはず。」

そう呟いたのは、アンである。サエコの慶應大学時代のサークルの同期。

その女・・・そうサエコの熱愛発覚のニュースは、すぐに、アンの元にも飛び込んできた。





—久しぶり。元気?ー

うららかな日差しが降り注ぐ冬も終わりのある日。ふと見たFacebookのポップアップが目につき、メッセージを開く。サークル時代の「知り合い」からのメッセージだった。

常々、”美しい人間の女友達は美しくあるべき”、と々思っていたアンにとって、数年ぶりに連絡をよこしてきた「絵に描いたように凡庸」な「ただの知人」の記憶を掘り起こそうとするも、アンの心には、親しみも、懐かしさも、郷愁の念すら呼び起こさない。送り主のプロフィール写真を、拡大してまじまじと見つめるものの、雑でちぐはぐな顔の造作が強調されただけで、記憶の彼方の域を出なかった。

アンは、送り主のタイムラインをざらっと一舐めする。

タイムラインに散りばめられた単語や写真から、勤務先や居住エリア、マンションの値段、生活水準、年収、交際相手のスペックまで割り出すのは、アンが得意とするところだが、その高度なプロファイリング能力を駆使するまでもない、無味乾燥で、華のない貧乏くさいタイムラインに、アンは、ため息をつき、サーチの手を止めた。

ー三つ子の魂は百まで、というけど、凡庸な女子大生の人生は、死ぬまで凡庸なのね。ー

女友達は、常に自分より若干劣るくらいの美貌を兼ね備えたものが望ましい。


女友達は、常に自分より若干劣るくらいの美貌を兼ね備えたものが望ましいのだ、と改めてアンは思う。高級宝石店で白い手袋をはめた店員が丁重に扱う美しいダイヤモンドの土台は、ホワイトゴールドか、プラチナと相場は決まっている。シルバーの土台にはめ込めば、たちまちダイヤモンドの輝きはくすみ、まるでチープなジルコニアかガラス玉のような偽物に見えてしまうだろう。


アンは、「絵に描いたように凡庸」な「ただの知人」に、「私の人生には関係のない人」というタグを一つ付け加えた。


しかし次の瞬間、その「絵に描いたように凡庸」で「自分の人生には関係のない」「ただの知人」から、もたらせれた言葉によって、アンの心は獰猛で荒ぶる暗雲がたちこめていった。


ー突然だけど、サエコって覚えてる?サークル1年のときにいたあの子!今、◯◯会社の社長と付き合ってるんだって。—

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絶世の美女ではない。だけどなぜかあの子には男が途切れない。あなたの周りにもきっといる、そんな女のお話です。

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