
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
フランス語が分からないのに一目で惹かれて結婚
金丸:息子の眞秀さんも、一時期ハンドボールのチームに入っていたそうですが、眞秀さんはいま小学生でしたよね。
寺島:そうです。来年は中学生です。
金丸:フランス人の旦那さんのお話も伺いたいのですが、いったいどうやって知り合ったのですか?
寺島:「東京フィルメックス」という映画祭がきっかけです。アニエスベーが協賛していたんですが、夫のローランはいろいろなイベントの企画やプロデュースをしていて、その時はフランスからアニエスベー東京に派遣されていました。私は主演映画が出品されていたので、彼の主催するパーティーに出演者みんなで参加したら、そこにローランがいて。
金丸:出会いはパーティー。なんだかすてきですね。
寺島:会場の入り口に立っていたローランのインパクトが、すごかったんですよ。全身青で固めていて、地下足袋か何かを履いてて。メガネだけは白で、ひげはもじゃもじゃ。
金丸:すごい格好だ(笑)。
寺島:「なんだこの人!?」って思って。でもその時、なぜか分かりませんけれど、結婚するような気がしたんです。
金丸:えっ?
寺島:一目見た時に、「私、この人と結婚するな」と思っちゃった。
金丸:いまのお話だと、結婚を感じるような要素がまったくありませんでしたが。
寺島:なんなんでしょうね。本当に漠然と。
金丸:旦那さんの方も、何か運命的なものを感じていたんですか?
寺島:いえ、何にも感じてなかったようです(笑)。
金丸:ひどい(笑)。
寺島:「女の子がすごいチヤホヤしてくれて、日本は楽しい」みたいなことを言ってましたけど。
金丸:それで、そのあとどうなったんですか?
寺島:次の日もパーティーに誘われたので、もちろん行って徐々に親しくなって。でも、その時の私はフランス語も英語もまったくしゃべれないから、一緒にお茶を飲みに行っても、ただ面と向かってお茶をすするみたいな感じで(笑)。
金丸:周りも「なんだろう、あの人たちは……」って見ていたかもしれませんね。
寺島:それなのに、また会いに行ったりして。そういう感じが続いたんですよね。何をするでもないんだけど、一緒にいて楽しかったんです。
金丸:しゃべれないけど(笑)。
寺島:本当にね(笑)。当初、ローランは「日本の文化は自分にはなじまないから、友だちとしてだったらいいよ」みたいな感じだったので、私は相当頑張りました。
金丸:結果、見事口説き落としたんですね。フランス男に口説かれる話はよく聞くけど、フランス男を口説き落とすなんて、寺島さん、さすがです。
寺島:友だちはいまだに不思議がりますよ。「外国人なんて全然興味なかったじゃん」って。
金丸:運命を感じた寺島さんに口説かれるなんて、旦那さんは幸せ者ですね。
寺島:まあ、結婚記念日とか、私は全然忘れちゃうんですけどね(笑)。
金丸:ええっ(笑)。
寺島:ローランはそういうのがすごい好きなので、毎年けんかになっていました。ちょっと前までは、ローランが「今日は何の日?」みたいなことを言ってくれてたんですけど、私があまりに忘れるものだから、もう言わなくなっちゃって。
金丸:あきれられてしまったと。
寺島:最近は私が思い出すまで、黙るようになっちゃいました(笑)。
金丸:あの、結婚記念日はいつなんですか?
寺島:……。
金丸:嘘でしょ(笑)。
寺島:えっと、4月26日のはずです。
金丸:今年はちゃんと覚えていたんですか?
寺島:今年はバラを贈りましたよ。
金丸:バラを?寺島さんの方からですか?
寺島:昔は向こうからもらっていたんですけど(笑)。
金丸:あまりにも忘れるから(笑)。夫婦関係が面白過ぎます。ところで、旦那さんも歌舞伎を見られるんですか?
寺島:すごく好きですよ。うちの父が出ている演目は必ず見るし、言葉が分からない部分もあるだろうけど、歌舞伎座に行って楽しんでいます。