SPECIAL TALK Vol.118

~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~


歌舞伎役者の父と、父を支える女優の母


金丸:早速ですが、寺島さんの生い立ちを教えてください。寺島さんのお父さまは歌舞伎役者の尾上菊五郎さん、お母さまは女優の富司純子さんですね。

寺島:はい。ただ、母は父と結婚したあと、女優業からいったん引退していますけどね。

金丸:実は中学生の頃、私はお母さまのファンになりまして。「このきれいな人は、誰!?」って衝撃を受けたのを覚えています。任侠映画にたくさん出演されていて、たいていは着物姿で。引退されたのは、やはりお父さまを支えるためだったのでしょうか?

寺島:そうでしょうね。完全に影の人間になるつもりだったようです。舞台に出続ける父を母がサポートする、というのが子どもの頃の記憶ですね。

金丸:ご本人がサポートしたいと思ったとしても、なんだかもったいないと感じてしまいます。やはり当時の価値観として「男は外に出て、女は家を守る」というのがあったんでしょうか?

寺島:それはあったと思いますが、母は引退することに後悔はなかったようです。やりきった、という感覚があったみたいで。

金丸:女優業を引退されたあとは、お昼のワイドショー『3時のあなた』で司会を務められたり、時間がたってからですが女優にも復帰されたり。いまでもお元気ですか?

寺島:はい、元気にしています。

金丸:いまもきっとおきれいなんでしょうね。おいくつになられるんですか?

寺島:75歳かな。あれ、違うかな。えっと……。あ、今年で79歳になるみたいです。

金丸:いま、スマホで調べましたね(笑)。ちなみにお父さまは?

寺島:父も元気です。何歳だったかな……。86?違ったかな?

金丸:ちょっと(笑)。

寺島:ああ、今年で82歳になるみたいです。

金丸:また調べてる(笑)。

寺島:しょうがないんですよ。うちは昔から記念日とか誕生日とか、そういうのをほとんど祝ったりしない家だったので(笑)。

金丸:まあ、お忙しいご家庭だったでしょうからね。だけど、私みたいな一般人からすれば、歌舞伎の家に生まれるというのが、どんなことなのか想像がつきません。

寺島:そんなに特別だとは感じたことはないですけど、子ども心に「うちにはいつも美味しいものがあるなぁ」と(笑)。父がお客様からいただいた『千疋屋』のメロンとか。

金丸:それはうらやましい。

寺島:そういう、いつも美味しいものに囲まれていた環境は楽しかったです。

金丸:子どもの頃に、友だちの家と比べたりしませんでした?

寺島:小学校から大学まで青山学院に通っていましたが、友だちが家に来た時に一番驚かれたのは、朝食ですね。うちは朝食がすごかったんです。

金丸:すごかった、というのは豪華だったということですか?

寺島:量もすごかったんですよ。朝からしゃぶしゃぶとか、焼肉なんてこともありました。

金丸:朝からしゃぶしゃぶ!?どれだけ豪勢なんですか(笑)。

寺島:だから、うちに泊まりに来た友だちが「朝からこんなに食べられないよ」って(笑)。

金丸:普通は朝に食べるものじゃないですよね。

寺島:うちの場合は、一家そろっていただくチャンスが朝食だけだったので。家族団らんというと世の中では晩ごはんというイメージですが、うちは朝食が団らんだったんです。どんなに朝が早くてもたたき起こされて、一緒に食べるというのが日課でした。

金丸:なるほど。夜に公演があると、お父さまが帰ってくる時間も遅いし。

寺島:父は「晩ごはんが遅くなる」じゃなくて、昼も夜も食べないんですよ。楽屋でも一切。

金丸:ええっ!?1日1食ということですか?

寺島:そうなんです。朝にガーッと食べて、それきり。

金丸:朝食だけとは驚きです。しかし、朝からそんなに食べていたら、学校の給食を食べられなさそうですが……。

寺島:全然そんなことなかったです。食べてましたよ(笑)。

金丸:それはすごい。ある種、才能ですね(笑)。

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