SPECIAL TALK Vol.118

~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~


「歌舞伎役者になる」。叶わないと知らなかった夢


金丸:寺島さんはどんなお子さんだったんですか?

寺島:まったく落ち着きのない子どもでした。

金丸:いまの寺島さんを見ていても、活発なお子さんだったんだろうなと。

寺島:けがもしょっちゅうしていました。弟(五代目尾上菊之助)は5歳年下ですが、私がどんどん危険に踏み込むものだから、それを見て学習して。

金丸:優秀な反面教師だったんですね(笑)。ご両親は寺島さんに「これはやっちゃダメだ」とか言うことはあったのですか?

寺島:少なくとも父に言われた記憶はないですね。そのあたりは母任せだったし。

金丸:将来の夢はありましたか?やっぱり女優になりたかった?

寺島:女優じゃなくて、歌舞伎役者になるつもりでした。歌舞伎を見るのが習慣だったし、楽屋にだって出入りしている。歌舞伎を見ている時は、いつも自分が舞台に立っているのを想像しながら見ていたくらいでしたから。

金丸:自然と「自分もやるんだ」と思っていたんですね。でも実際には、女性は舞台には立てない。

寺島:だからそれを理解した途端、夢としては終わりました。日本舞踊とか、歌舞伎に関係する楽器のお稽古もしていたんですけど。

金丸:それは「やりなさい」と言われて?

寺島:いえ、自分がやりたくて。だけど、私が中学に上がる前に弟が舞台デビューして。

金丸:「あれ、私は?」と思いますよね。

寺島:そう。そこで初めて、「え?私は出られないの!?」と気づいて。

金丸:それまでに、ご両親とそういう話はされなかったんですか?

寺島:あとあと母と話したことがあるんですよ。「なぜ歌舞伎役者になれないって言ってくれなかったの」って。そしたら母は「分かっていると思っていた」と。舞台に立てないと知ってからは、それまで一生懸命やっていたお稽古も完全にやる気がなくなって、全部やめてしまって。一時期、歌舞伎もまったく見なくなりました。

金丸:相当なショックを受けられたかと。

寺島:生まれた時から歌舞伎座に出入りしていたけど、私は別に必要ないんだなって思ったら、歌舞伎のことなんて考えたくなくて。それで代わりに、学校の部活に打ち込むように。

金丸:それがハンドボールだったんですか?

寺島:中学の時はバレーボールで、ハンドボールは高校からです。当時の青学は、ハンドボール部がすごく強くて。といっても、東東京ブロックで確実にベスト4に入る、くらいですけど。

金丸:レベルの高い東京で、ベスト4なら十分ですよ。寺島さんの高校時代のプレー映像を拝見させていただきましたが、エースでしたね。すごく格好良かったです。

寺島:ありがとうございます。高校の3年間は、本当にハンドボール漬けでした。太ももはパンパンに太くなったし、疲労骨折するくらい熱が入っていましたね。

金丸:まさにスポ根ですね。

寺島:でも、ただのスポ根じゃないですよ。私たちのチームが来ると、男子がワッと寄ってきましたから。

金丸:えっ、なぜですか?

寺島:強い学校の選手は、髪が短めで、靴下も短くて、というのがお決まりだったんです。でも、私たちのチームは髪の毛が長い子が普通にいたし、ハイソックスだったので。

金丸:要は、かわいかったということですね(笑)。

寺島:そういうことですね(笑)。だから、注目される気持ち良さはありました。

金丸:それで強いんだから、すごく格好いい。チャラチャラしていて弱かったら、目も当てられません(笑)。

寺島:ただ、意地悪もされましたよ。長い髪の毛に松ヤニをべとーっと付けられたり(ハンドボールではボールを握りやすくするために松ヤニを使用する)。

金丸:ええっ、それはひどいやっかみですね。

寺島:でも、そんなことをされてもめげませんでしたけどね。本当に楽しかったから。

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