2011.08.22
肉の哲学者たちが表現する、珠玉の肉料理 Vol.2肉の哲学者たちが表現する、珠玉の肉料理
必然から生み出された究極の肉焼き術を伝える
【肉選び】
以前は徳島のすだち牛と岩手の短角牛を使っていたが、どちらも手に入りにくくなったので、今年2月からは熊本あか牛を使用。肉質がより細やかな2歳以下のものを選ぶ。酸があるものの方が熟成に向くが、最終的には脂の状態などを手で確かめて決める。北海道池田町でワインの搾りかすを食べて育ったいけだ牛など、新しい肉の使用も検討中
焦げたように真っ黒な焼き上がりは、初めて見た時はショックなほどだが、カットしてみると中は真っ赤。すぐに湧き出る肉汁が断面を艶やかに覆う。表面はカリッカリで、内側はしっとり、旨みは特濃。これが茂野氏の焼く『ル・セヴェロ』仕込みのステーキだ。
そもそもなぜ、この焼き方が生まれたのだろう。「きっと必然だと思います」と、茂野シェフ。「セヴェロでは肉を6~7週もの長期間、熟成させていました。するとナッツのような熟成香が、ちょっと鼻を付く匂いに変わってくる。味は抜群でも、普通に焼いたのでは臭くて食べられない」。
肉を乾燥熟成させると、中の水分が減り糖度が上がるので旨みがぐっと増す。『祥瑞』では、精肉店で1週間から10日熟成させた肉を仕入れ、店で最終的に3~4週間のところまで持っていく。肉の味自体が濃厚なのは、この熟成によるもの。では「焼きの極意は?」と尋ねると「ノリと勢いです」ときっぱり。近頃は1晩で400グラム超の肉を20枚近く焼く日が続くと聞けば、その答えも頷ける。
「熟成肉の美味しさが知られるようになって嬉しい。今ももっと面白い肉はないか、良い熟成方法はないか、常に考えています。これからも期待して下さい」
【切る】
『祥瑞』のステーキは1枚400~800g。これは意識してサイズのバリエを用意しているわけではなく、「髄や筋などの間に手を入れて触れてみると、ここでしか切れないという場所にあたる」と茂野シェフは話す。切り分けたら1枚ずつまた布に包んで冷蔵庫へ。オーダーを見ながら焼く分を常温に戻し、小さな筋や余分な脂は焼く前に丁寧に取り除く
【焼く】
たっぷりのヒマワリ油をフライパンに入れ、揚げるように焼くのが『セヴェロ』仕込みのスタイル。焼く前の肉が常温に戻っている場合は、油をよく温めてから肉を入れる。逆に肉が冷たい時は、常温の油に入れて、油と肉を一緒に加熱。焼く前の肉には味付けせず、火加減は強火で通す。5分後、表面をキャラメリゼのような焼き目が覆えば完成だ
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