SPECIAL TALK Vol.105

~現役復帰した今だからできることがある元オリンピアンとして伝えたいスポーツの力~


小さい頃からおてんば。9歳で全国優勝を果たす


金丸:ところで、「シンクロナイズドスイミング」から、どうして名前が変わったんですか?

小谷:いろいろな説がありまして。「シンクロナイズド」は「同調させる」という意味ですが、IOC(国際オリンピック委員会)の偉い方が「ソロは同調しないじゃないか」と言ったらしいとか。

金丸:一理ありますね。

小谷:もっとも、ソロの場合も曲と同調して演技をするのは変わらないですけどね。

金丸:だけど私は「アーティスティック」のほうが、よりふさわしいと感じます。だって、デュエットやチームだって、みんなが同じ動きをしているわけじゃない。それぞれが違う動きをしても、総合的にひとつの演技として成り立つわけだから、まさしくアートですよ。

小谷:ありがとうございます。シンクロナイズドスイミングは、1984年のロサンゼルスオリンピックで種目として認められるまで、ずっとマイナーな競技でした。私は小学校の時にシンクロに出合いましたが、当時は「シンクロ」といってもなんのことか誰も知りませんでした。だから、私の周りは「せっかくシンクロという名前が浸透したのに、どうして変えちゃうの」という声ばかりで。私もマイナスの感情を抱いていましたが、金丸さんからポジティブなご意見をいただけて、とてもうれしいです。

金丸:小学生でシンクロに出合ったということですが、改めて順に聞かせてください。まず、お生まれはどちらですか?

小谷:東京生まれの東京育ちです。子どもの頃は渋谷区の神宮前に住んでいました。

金丸:東京のど真ん中ですね。

小谷:でも生まれた当時は、まだ何もないところでしたよ。表参道の開発が一気に進んだのは、小学校の頃です。

金丸:小谷さんはどんなお子さんでしたか?

小谷:すごくおてんばでしたね。

金丸:今の雰囲気からも、そんな感じがしました(笑)。

小谷:親からもよく「何度も幼稚園に連れ戻した」と聞かされていました(笑)。

金丸:「連れ戻した」ですか?

小谷:はい。私には同じ幼稚園に通う、ふたつ上の姉がいて。

金丸:ということは、小谷さんが年少の時、お姉様は年長。

小谷:そうです。年少の時、歌ばかり歌わされるのが嫌だったみたいで、姉が年長さんのクラスで楽しそうに活動しているのを見て、自分も交ざろうとしたら「ダメ」と追い返され。だから「つまんない!」って幼稚園を脱走したみたいです。何度も。

金丸:気に入らないと脱走するタイプ(笑)。幼稚園生なのにすごい行動力ですね。運動神経も良かったんですか?

小谷:体を動かすのは好きでしたね。両親はアスリートではありませんが体育会系で、父はアイスホッケー、母は陸上を部活でやっていたそうです。

金丸:では、水泳に出合ったきっかけは?

小谷:姉ですね。姉は私と違って、体があまり丈夫じゃなかったので、お医者さんにすすめられて、近くの国立競技場の水泳教室に通っていました。姉の送り迎えについていくうちに、「私もやりたい!」って。

金丸:「妹はお姉ちゃんがやっていることを全部やりたがる」と聞きますが。

小谷:まさにそれですね。水泳教室に通える年齢に達していなかったんですけど、私の熱意が通じて、特別に認めてもらいました。

金丸:最初はシンクロではなく、普通の泳ぎを?

小谷:はい。そして、これはたまたまですが、私を担当してくださった先生の旦那さまが、かつて日本にシンクロを取り入れた方だったんです。

金丸:運命ですね。

小谷:それで、ある時「シンクロやってみない?」と誘われました。9歳の時です。それまで見たことも聞いたこともなかったのですが、見よう見まねでやってみたらすごく上手だったらしくて。技もどんどんできるようになり、「試合に出ましょう」と言われるまま出場した大会で、優勝して。

金丸:えっ?それはどんな規模の大会ですか?

小谷:全国大会です。

金丸:いきなり全国優勝!

小谷:始めてから4ヶ月でしたね。

金丸:とんでもない才能です(笑)。

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