5月にオープンした『ビストロ カルネジーオ』は、カルネ=肉、ジーオ=塩という名が示す通り、一にも二にもとにかく肉三昧の店である。店内に入ると、まずカウンター上の肉のショーケースに目を奪われる。鮨屋のネタケースさながらに、キメ細やかなサシが入った赤身肉や乳白色のミノ、迫力の豚タンなどが整然と並んでおり、肉(ホルモン)好きならば、この段階でまずハートをガッチリとわし掴みにされること間違いなしだ。
ホルモンの専門店を系列に持つとあって、赤身だけでなく、内臓肉の鮮度の良さにも絶対の自信があると語るのは、店主の加藤俊明氏。だからこそ「シンプルに塩で肉を食べてもらう」ことに、ひたすらこだわる。注文を受けた後、件のケースから肉を取り出して、その場でカット。カウンター席に座れば、加藤氏が炭火で豪快に肉を焼き上げる様を間近で見ることができる。まさに、一発入魂の気合の入りぶり。じりじりと焼けていく肉を見つめながら、店主と客の気持ちが一体となる瞬間だ。
皿に盛られた熱々の肉塊を噛みしめるたびに、旨みがジュッジュッと口の中に迸る。部位の個性が生きた肉の、力強い味わいもさることながら、フランスやイタリア、アルゼンチンからアフリカと、ワインの品揃えも幅広く、ボトルは、なんと一律2800円! このご時世にあってなんとも気風のいい話である。肉好きなワイン飲みにとって、これほどに“ジャストミート”な店は、そうそうあるまい。
牛肉進化論。炭火ステーキから肉割烹まで
ただ純粋に旨い牛肉だけを追い求めた結果、あるシェフは炭火ステーキに、 ある調理人は熟成肉へ、さらにはもつの懐石に肉割烹まで、行き着く先は十人十色。 群雄割拠の牛肉界。今を知るなら、まずはこの店を押さえよう。
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