スモールワールド~上流階級の社会~ Vol.8

うっかり上流階級の結婚式に参加して、見えた真実とは…。「スモールワールド~上流階級の社会~」全話総集編

東京のアッパー層。

その中でも、名家や政財界などの上流階級の世界は、驚くほど小さく閉じている。

例えば、ついうっかり“友人の結婚式”なんかに参加すると「元恋人」や「過ちを犯した相手」があちこちに坐っていて冷や汗をかくことになる。

まるで、いわく付きのパールのネックレスのように、連なる人間関係。

ここは、誰しもが繋がっている「東京の上流階級」という小さな世界。

そんな逃れられない因果な縁を生きる人々の、数珠繋ぎのストーリー。

「スモールワールド~上流階級の社会~」一挙に全話おさらい!

第1話:友人の結婚式で受付を頼まれて、招待客リストに驚愕!そこには、ある人物が

チャペルの重たい扉が開かれると、そこに立っていたのは新婦でも新郎でもなく、小さなフラワーガールだった。

タンポポの綿毛みたいなふわふわのドレスを身にまとった、可憐な少女。年齢は、6、7歳といったところだろうか。

小さな体を子ウサギのように弾ませて、色とりどりの花びらを撒き、バージンロードを切り開いていく。

思いがけない可愛らしい主役の登場に式場じゅうが微笑ましく沸く中、僕だけが全く種類の違う驚きを感じていた。

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第2話:親友の結婚式。入場してきた新郎を見て、女友達が思ってしまったありえないコトとは

「あっ、ママ!お嫁さんが、マサミちゃんが入ってくるよ!」

私は、人差し指を口元に添えて「シー」とジェスチャーで伝えると、照明の落とされた会場の中、一点だけ煌々とスポットライトで照らされた扉を見つめる。

流れるような指使いのバイオリン。華々しく響き渡るピアノ。そして──入場してくる、真っ白なドレスに身を包んだ親友のマサミと、新郎の向一郎くん。

割れんばかりの拍手の中で私は、誰にも聞こえないように呟いた。

「向一郎くんの隣にいるのが、マサミじゃなくて…私だったら良かったのに…」

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第3話:慶應幼稚舎受験の直前。軽井沢の別荘で息抜きをしていたら、母親が後悔することになった事件

手元に原稿は準備してきたものの、私はそれを折りたたんだまま、乾杯のスピーチに取り掛かる。いち企業の社長という立場上、人前で話す機会には慣れている方なのだ。

けれど、期待するような、恐縮するような視線を、まっすぐに私に向けるマサミちゃんの晴れ姿…。

その美しい眼差しを受け止めていると、否が応でも胸に熱いものが込み上げてくる。

それもそのはず。純白のウエディングドレスを煌々と照らすスポットライトは、レフ板の役割を務めるドレスを経て、マサミちゃんの顔をくっきりと華やかに際立たせている。

そして、その額には──。私が永遠に逃れられない、罪のしるしが浮き上がっているのだから。

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第4話:披露宴のテーブルで、新婦の悪口を言う女友達。笑顔の下に隠された恐ろしい本音

私は恐縮しながら、お言葉に甘えて差し出されたタオルハンカチを受け取る。背に腹はかえられない。私のアイメイクは、もはや崩落寸前だった。

「すみません、すっかりお言葉に甘えてしまって。メイク直しの道具を持ってきていなかったので助かりました」

女性にそうお礼を言いながら、私は手元の席次表を確認する。披露宴という、閉じられた世界の話だ。肩書を見れば、新婦側の招待客という以外でもどこかで共通点があるかもしれない。

女性の名前は…「新婦友人・薬袋サエ様」。

― 薬袋…?

その珍しい名字には、どこかで見覚えがあるような気がした。

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第5話:女友達の結婚式でスピーチを頼まれて。“言ってはいけないこと”を暴露し、場が騒然…

芸能人でもないくせに、ほかに類を見ないほどの大規模な披露宴だ。

コロナ禍もピークを過ぎたとはいえ、決して進行を滞らせまいという一応の配慮なのかもしれない。

茶番じみたファーストバイトの催し物は省略されていて、ケーキカットだけだった。このくだらない披露宴で、それだけは評価できるポイントと言えるだろう。

…けれど、真っ白いクリームが汚らしくべったりとついたナイフを見て、私は思う。

― あのナイフで、新婦のマサミを滅多刺しにしてやりたい。

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第6話:結婚式に昔の女が乗り込んできて…。焦った新郎は、新婦に“あること”を告げ…

まさか海外で適当に遊んだ女が、自分の結婚式のスピーチに来るなんて…。マサミが離席してからの歓談の時間、俺の頭は混乱状態だ。

― クソッ。サエが、マサミに全て話したらどうする?お義父さんにバレたらどうなる?

それを考えると、今すぐ会場から走って逃げ出したい衝動に駆られる。

けれど、15年もかけてついにここまで来たんだ。逃げるわけにはいかない。絶対にバレるわけにはいかない。

ワシントンD.C.でサエと遊んでいたことも。サエに話した“俺の立場”に…、大きな嘘があることも。

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第7話:「この人でいいのかな…」結婚に迷いがあった女。披露宴当日、両親への手紙で告白した本音

両親に送る、花嫁の手紙。何ヶ月もの間、推敲を重ねた手紙。別に、この手紙にかぎったことじゃない。私は昔から念入りに、やるべきことをする。

式の準備。会社での仕事。部活のマネージャー業。中学受験。どれもこれも入念に準備をして、一生懸命に努力をしてきた。

でも…一生懸命になっても、叶わなかったことがふたつだけある。

ひとつは、慶應幼稚舎に受からなかったこと。

もうひとつは──。私が、男の子として生まれてこなかったこと。

第7話の続きはこちら

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