柳 忠之のこの12本におまかせ Vol.24

3,000円で大満足な、上質チリワイン。ホームパーティーで大活躍間違いなし!

クリスマスや忘年会、何かとイベントが多く待ち受けている12月。

コロナ禍ということもあり、今年はゆっくりホームパーティー!という選択肢もあり。

そんな時、差し入れで持っていったら格好良い、高コスパなワインを紹介しよう。

左:東京カレンダー編集部 嵩倉伶奈/右:ワインジャーナリスト 柳 忠之氏


専門誌からライフスタイル誌まで、幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるワインジャーナリスト・柳 忠之氏。

柳氏が東京カレンダーでワイン連載の担当となって5年目。ワインの勉強に日々奔走する編集・嵩倉の質問に、いつも親身になって答えてくれる。

どや顔で持っていきたいチリの歴史的品種とは


――コロナも落ち着いてきたので、感染対策には万全を期したうえで、友だちの家でホームパーティーをすることになりました。ワイン1本持参なんですけど、柳さん、東カレのワインコラム担当として恥ずかしくない1本を教えてください。

柳「今持って行って、どや顔できる1本といったらシャルル・ラショーのアリゴテかな〜?」

――ほうほう、アリゴテなら3英世でおつりが出そうですね。

柳「いや、15諭吉くらいするんだよね、このアリゴテ。」

――どひゃ〜。そんなマニアックなワインじゃなくても結構です。味にはうるさいけど、ネームバリューにはこだわらないメンバーで。

柳「でも、パンは『ラトリエ ドゥ プレジール』じゃなきゃいやん……とか言う人たちでしょ?そしたら、あれかな、チリのパイス。」

――パイス……品種名ですか?でもチリなら“チリカベ”、カベルネ・ソーヴィニヨンでは?

チリのパイス
「Bouchon Pais Salvaje Maule Valley(ブション パイス・サルヴァヘ マウレ・ヴァレー)」


1970年代、チリのマウレ・ヴァレーに創立したワイナリー。

「サルヴァヘ」とはワイルド、野生という意味。自生するパイスは他の木の枝に巻きついて実をならすので、収穫には5メートルのハシゴが必要。野イチゴのアロマが華やかに香り、軽やかな味わい。

2,970円/WINE TO STYLE TEL:03-5413-8831



柳「うん。クラリン(編集担当の嵩倉)の言うとおり、チリで最もメジャーで世界に通用するブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンだと僕も思う。けど……。」

――けど?

柳「カベルネ・ソーヴィニヨンっていろんな国で造られていて競合が激しいし、誰かがオーパス・ワンとか、シャトー・マルゴーとか持ってきたら悔しいじゃん。」

――悔しいというより、恥ずかしくてどんなに自信があっても〝チリカベ〞は出せません(涙)。で、パイスっていったいどんな品種なんです?

柳「15世紀末にアメリカ大陸が発見されると、キリスト教の宣教師たちによる先住民への布教活動が始まった。

布教にワインは不可欠なのに、アメリカ大陸にはワイン用のブドウがなかったから、宣教師たちはヨーロッパから苗を持ち込んだんだね。それがカリフォルニアのミッション、チリでパイスと呼ばれる品種だ。

じつはチリワインが世界的に有名になる90年代まで、チリのブドウ畑を席巻していたのはパイスだったんだよ。」

アルゼンチンでの品種名はクリオージャ


パイスはアンデスの向こうでは別名で親しまれる。

オススメはエル・エステコ「オールド・ヴァイン 1958 クリオージャ」2,750円/スマイル TEL:03-6731-2400



――なんと!そんな歴史ある品種なんですね。

柳「もともと大量生産向きだし、あか抜けない性質もあって、カベルネやシャルドネに取って代わられた。ところがまだこの品種が残っている産地があり、最近はそこで面白いワインが造られている。

この「パイス・サルヴァヘ」は自生するパイスから造られた赤ワイン。今どきのゆるっとした味わいで、さっきの蘊蓄も語ればパーティーの主役は間違いなし。」

――では嵩倉、チリのパイスについてどや顔で語ってきます!


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