松坂由里香は、パーフェクトな女。
美貌。才能。財力。育ち。すべてを持つ彼女は、だからこそこう考える。
「完璧な人生には、完璧なパートナーが必要である」と。
けれど、彼女が出会う“未来の夫候補”たちは、そろいもそろって何やらちょっとクセが強いようで…?
松坂由里香の奇妙な婚活が、いま、幕を開ける──。
Vol.1 慎重な男
無機質なブラインドの隙間から、うっすらと朝の光が差し込む。
少しざらついた感触のリネン混のシーツ。自分のものではないベッド。ここは、昨晩流れのままにたどり着いた、彼──タカシの寝室だった。
― 2回目のデートでお泊まりなんて、まだちょっと早かった…?
起き抜けの頭で考えるなり、由里香はすぐにそれを否定した。
― ううん。早めに確かめておきたいもの。結婚するかもしれない相手とは、体の相性だってパーフェクトじゃないとね。
タカシとのデートはたった2回目とはいえ、愛情らしき感情が芽生えているかもしれない。
そう思い、隣で寝ているはずの彼の顔を見て確認しようする。
しかし、だんだんと覚めてきた由里香の目に映るのは、自分だけが取り残されたもぬけの殻のベッドなのだった。
― 朝活とかするタイプ、なのかな?
身につけていたアップルウォッチは、5:17を示している。まだ早朝だ。
「タカシくん…?」
由里香は、タカシの姿を探して寝室を出る。
そして…リビングの真ん中で目にした彼の姿に、思わず愕然とするのだった。
「うそでしょ…。ねえ、一体何してるの?」
この記事へのコメント
タカシはかなりやばい奴だけど、むしろタカシの婚活奮闘を読んでみたい!笑