推す女 Vol.1

推す女:世帯年収2,500万・豊洲在住のDINKS妻。ある日、結ばれることのない年下男に恋をして…

どんなに手を伸ばしても、絶対に届かない相手を想う。

でも、その距離感さえ愛おしく感じる。

彼女たちが抱く想いは、憧れか、依存か、それとも本物の愛か?

結ばれることのない相手に人生を捧げる、女たちの心情を紐解いていく。

これは、「推し」がいる女たちのストーリー。


『結婚6年目・DINKS妻の恋』奈津子(33)【前編】


PCを閉じ、大きく伸びをする。窓の外から見える空は暗く、高層ビル群だけが細かい光を放っていた。

ふと時計を見て、ぎょっとする。時刻は21時半。そういえば今日は、私が夕飯を作る当番だったはず。

急いでリビングに向かうと、夫の正治は、すでに弁当のようなものをつまみながらビールを飲んでいた。

「まさくん……ごめんなさい。会議が思いのほか長引いて」

「奈津、大丈夫だよ。そんなことだろうと思って、仕事帰りに晩メシ買ってきたから」

よく見ると、それは六本木『鮨 由う』のちらし寿司。

以前から、テイクアウトしてみたいと2人で話していた店のものだ。

― 私の分も買ってきてくれればいいのに……。

1人分しか用意されていないそれを見て、小さくため息をつく。

しかし、夕飯担当だったのに用意をし忘れた私のほうが悪い。そもそも『家事はすべて分担し、その他自分のことは自分で』という2人で決めたルールがある。

夫は何も間違っていない。もちろん、悪気もないのだろう。

それでも、彼の異常なまでに気の利かない性格には度々イラッとさせられる。

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