2022.09.02
私にふさわしいオトコ Vol.1自分は、間違いなく強運の持ち主だ。穂波はいつもそう思っている。
まず、この美貌。
バランスの整った目鼻に、いくら雑に扱っても荒れない美しく白い肌。
小さいときから、親、友人、教師…周囲のどんな人たちからもチヤホヤされて育ったし、とりわけ男性からは、熱烈な視線も注がれてきた。
さらに、地頭の良さ。たいして勉強をせずともすんなり早稲田大学商学部に合格した。
そして今は、広告デザイナーとしてキャリアを順調に重ねている。デザイナー歴7年にして、大きなデザイン賞だって受賞した。
― 私の人生は、なんでも思い通りになってきたの。
まれに「気が強い」「偉そう」などと言われることもあるが、そんなのは愛嬌。
恵まれた人生の副産物だと思って、気にしないことにしている。
しかし半年前、そんな穂波の人生に、はじめて影がさした。
仕事で出会って「いいな」と思った男性が、3人連続で既婚者だったのだ。
― …明らかに、いい人は売れてきているわ。
つまり早く結婚しないと、いい相手がいなくなる。そう気づいたのだ。
もう29歳半ば。
― 急がないと。
そこでさっそくメガバンクの銀行員との食事会に、すがるような気持ちで参加した。
◆
あの日、3対3の食事会で、ちょうど穂波の目の前に座ったのが一樹だった。
初対面の印象は、最悪だった。
「はじめまして。穂波と申します」
「一樹です…よろしくお願いします」
― なに、そのボソボソした声。やる気なさそう。
趣味を聞いても、仕事の話を振っても、一樹は自分から進んで話そうとはしなかった。
かといって聞き上手なわけではなく、穂波の話に「そうですか」「なるほど」くらいの反応しか見せない。
次第にいらいらしてくる。
「あの、一樹さん」
「はい」
「今日ここに来たのって、人数合わせですか?」
すると一樹は意外そうな顔をした。
「そんなことないです。すみません…慣れないもので」
「そう…」
無愛想な表情で黙っていると、一樹は小さな声で言った。
「こんなんじゃ、彼女をつくるのは難しいですよね」
眉間にしわを寄せて考え込む一樹は、どこか風変わりだった。
「彼女が欲しいんですか」
「はい。結婚して…いい家庭を作りたいんです」
一樹はサッとメガネを直してから続ける。
「とにかく早く、立派な一家の主になりたいんです。そのほうが、仕事で信頼される気がしますし」
穂波は、一樹を改めて見る。
どうみてもモテるタイプではない。
…ただ意外にもメガネの奥の目は美しく、顔も整っていた。
― 銀行員ってことは、収入はそこそこあるはずよね。…なら、物は試しね。
穂波のほうから、連絡先を聞くことにした。
期待値はかなり低いが、一度デートをしてみてもいいかなと思ったのだ。
なにしろ、結婚願望が強いらしい。付き合ったら結婚までの話も早いだろう。それが最大の魅力だった。
穂波からデートに誘い、翌週末に『サローネ トウキョウ』でランチをした。
今回は会話がそこそこ続き、カフェに移動してお茶をして解散。
さらに翌週は夕方から銀座でショッピングを楽しみ、『レガーロ』でディナーをした。
一樹とのデートは、すごく楽しいというわけではなかった。だが、その分決定的な不満も起こらない。
「お店をよく知らない」と言うのでレストランを選ばなくてはならないのは少々不満だったが、微妙なお店に連れていかれるよりはずっとよかった。
それに、高級店でも当然のようにしっかりエスコートしてくれる。
高いはずのお会計を当然のように持ってくれる姿も、高評価だった。
そして迎えた3回目のデート。
『クラージュ』でディナーを楽しんだあと、タクシー乗り場に向かう道の途中で、ついに一樹は「あの」と切り出した。
この記事で紹介したお店
サローネ トウキョウ/東京ミッドタウン日比谷
レガーロ
クラージュ
【私にふさわしいオトコ】の記事一覧
2022.12.09
Vol.16
「まさか、こんなヤバい人だったの…?」やっと付き合い始めた彼に、女が戦慄した理由
2022.12.08
Vol.15
新婚早々、「他の男にすればよかった」と思った女は…。「私にふさわしいオトコ」全話総集編
2022.12.02
Vol.14
略奪愛を実らせ、同棲をはじめた1週間後。彼の元カノが“ある物”を持って訪ねてきて…
2022.11.25
Vol.13
離婚寸前の夫に内緒で外泊。翌朝、女のスマホを鳴らした意外な人物とは
2022.11.18
Vol.12
「彼女には、内緒ね」男にセカンド扱いされた女は、怒りのあまり…
2022.11.11
Vol.11
「ごめん、チャペルには1人で行ってくれる?」そう夫に告げた女は、式場見学の最中に別の男に電話して…
2022.11.04
Vol.10
「誰か来てるの…?」夫婦喧嘩で家出していた妻が、1週間ぶりに帰宅。玄関で見知らぬヒールを見つけ…
2022.10.28
Vol.9
結婚後に、運命の男を見つけた女。「離婚するから付き合おう」と自信満々に告白した結果…
2022.10.21
Vol.8
「結婚して豹変したよね」夫に“詐欺師”呼ばわりされた30歳女。女のまさかの言い分とは
2022.10.14
Vol.7
「酔っちゃった…」カウンター席で、若手社長に肩を寄せた女。しかし男はまさかの反応で…
おすすめ記事
2016.10.11
慶應内格差
慶應内格差:エリート街道を歩むメガバンカー、どんなに背伸びしても所詮外部生?!
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2021.01.16
私、やっぱり結婚がしたい
食事の最中、化粧室に姿を消した同僚の女。その隙に彼女が仕掛けていたコトとは…
2021.07.02
ごきげんよう時代を過ぎても
28歳・交際経験なしの美女。好きな男の前で、お嬢様校卒が裏目に出た“アノ瞬間”とは?
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
- PR
2024.11.22
渋谷在住の29歳OLが自分へのご褒美に♡と、奮発したあるモノとは?
2020.04.10
男子校男子
男子校男子:「えっ、あの子が…?」“清楚系女子”に恋した男が、陥る罠
- PR
2024.11.22
2024年の締めくくりはこれで決まり! 美味でゴージャスな「アメリカンビーフ」を楽しめるステーキハウス4選
2018.03.29
東京就活事情
「僕と結婚したら外交官夫人になれるよ」のキラーフレーズが効かない…彼女いない歴27年、男の焦り
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"