薫子の愛は、重すぎる Vol.1

薫子の愛は、重すぎる:記念日に突然フラれた女。泣きながら綴った、元彼へのLINEメッセージ

『ひでくん。いま家に帰りました。ひでくんは無事おうちについたかな?…って、もう彼女じゃないんだもん。そんなこと聞いちゃダメなんだよね。

ひでくんと付き合ってた3ヶ月間、私はとっても幸せだったよ。お仕事忙しかったのに、いつも優しくしてくれて本当にありがとう。きっと私、ひでくんの優しさにいつのまにか甘えちゃってたよね。

今日は、私のダメなところをはっきりと教えてくれてありがとう。どれだけひでくんに負担になってたのか、今になって反省してます。

ひでくんがイヤだったら、100日記念日も、毎日寝る前に通話したがるのももうやめる。それから…』

張り裂けそうな胸の痛みに任せて想いを綴っていた薫子は、そこまで打ち込んでから、はたと指先を止める。

「重い。重すぎる」

思わずそんな言葉が、自分自身の口からこぼれた。

びっしりと字と絵文字で埋め尽くされた白い入力ボックスが、スクロールに勢いが必要なほどとんでもない長さに伸びきっている。

「分かってる。こういうところがダメなんだよ、こんなの自分でもドン引きだよ〜〜!」

いつもそうだ。

相手を好きになればなるほど、不安になればなるほど、こうして一方的に想いを押し付けてしまう。

こんなLINEを送ろうが送るまいが、秀明の心は2度と手の届かないところへと遠ざかってしまっていることを、本当は分かっていた。


― お父さんとお母さんと同じようにしてるだけなのになぁ…。私が世間知らずだから、恋愛観もズレてるのかなぁ…。

冷静さをとりもどした薫子は、かたわらにスマホを放り出す。

そしてベッドに倒れ込み、枕に顔をうずめてどっぷりと自己嫌悪感に浸った。

幼稚園からお嬢様女子校育ち。なじみの華道教室で不定期にアシスタントを務めるくらいで、きちんと働いたこともない26歳の箱入り娘。

両親に憧れるあまり「最愛の旦那様を支える」生活を夢見る薫子は、これまでの人生、華道や書道、着付けやピアノに料理など、時代遅れとしか言いようのない花嫁修行しかしてこなかった。

夢中になって努力してきたのは、恋だけ。

惚れやすいながらも一途な薫子は、これと決めた人をとことん愛しては尽くして…。

そして、「重い」と言われてしまう。

― このままじゃきっと、同じことの繰り返しになっちゃう。でも一体、どうしたらいいの…?

問題点が分かっていつつも、肝心の直し方が分からない。

薫子は、クロエのワンピースがしわくちゃになるのも気にせずに、足をジタバタさせる。

その時だった。

「薫子〜?」

ノックとともに、父の心配そうな声がドア越しに響く。

慌ててベッドから立ち上がった薫子は、ドレッサーの鏡で乱れた身なりをさっと確認したあと、ゆっくりとドアを開いた。

「はーい、なに?お父さん」

「ちょっといいかな?薫子に、ちょっとした提案があるんだけど…」

作り笑いを浮かべる薫子の前で父は、神妙な面持ちを浮かべた。


▶他にも:結婚できない私たち:可愛くて会話上手な28歳女。なのに男にホテルに“置き去り”にされたのは…

▶Next:5月10日 火曜更新予定
愛が重すぎて、恋愛がうまくいかないお嬢様・薫子。父が持ちかけた提案とは

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この記事へのコメント

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No Name
薫子ちゃん純粋でいい子だよね!
でもさすがに26歳で社会人経験ないのは微妙かも。
時間が有り余ってるから追いかけすぎちゃうのかも。
薫子ちゃんみたいな子がいいって男の人もいると思うけど、ドンピシャで出会うの難しいかな?
紹介かお見合いか。。。
2022/05/03 05:2692返信1件
No Name
薫子、キモいな。 お嬢様と重い女を一緒にするなって。
2022/05/03 05:2953返信9件
No Name
愛は与えるものとか思ってるからダメなんじゃない?尽くす女はウザいし本命になれないからね。愛は共に育むものなんだよ!
2022/05/03 05:3248返信6件
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