離婚歴がある男性は、モテる。
女性の扱いを熟知していて余裕があり、また結婚に対しての幻想もない。
それゆえ人生で二度の“独身貴族”を楽しんでいる男性が、東京には少なくないのだ。
渋谷区松濤に住む滝口(38)も、そのうちの1人。
しかし自由気ままなバツイチ独身男性生活から、“ある女性”の登場で生活が一変……。
これは東京に住む男が、男としての「第二の人生」を見つめ直す奮闘記である―。
Vol.1:気ままな独身生活を一変させた女性
「今日はいつもよりだいぶお時間早いですが、お忙しいんですか?」
滝口がトレーニング後のマッサージを受けていると、トレーナーに声をかけられた。
ここのパーソナルトレーニングジムに通い始めて早2年。どんなに忙しくても週に3回は筋トレに精を出す。
「まあ、ぼちぼちだね」
トレーナーの言葉に適当に相槌を打ったが、年が明けてから仕事はかなり忙しかった。数年前に友人と2人で起業し、今のところ事業すべてが成功しているのだ。
― さ、一度家に帰ってから、会社に顔を出すか…。
マッサージを終えてロッカールームへ戻ろうとしたら、スマホの小刻みな振動に気づく。
画面に目をやると、そこには思いも寄らない名前があった。
― エリ?今さら、何の用だろう?
電話をかけてきたのは、元妻のエリ。少なくとも滝口にとっては、懐かしい名前である。
6年前に離婚して以来、エリと、彼女と一緒に住んでいるひとり娘には一度も会っていなかった。
いや、会わせてもらえなかった、というのが正しいのかもしれない。
だが、滝口は毎月、彼女が希望した金額以上の養育費を送り続けている。
スマホは執拗に振動を続けた。滝口は通路の片隅で応答ボタンを押す。
「もしもし?ごめんなさい、平日の朝に…」
電話の向こうの声は、まぎれもなく元妻のエリだった。
この記事へのコメント
相談するのではなく、勝手に決めてきて、その日から娘を押し付けようとするなんて。