
~夢を語るのが得意。人工知能を武器に日本人の働き方を変えたい~
人工知能の役割をコスト削減から成長戦略へ
金丸:2016年は、そろそろ「ディープラーニング」という言葉が知られるようになってきた頃ですね。
平野:そうなんですよ。以前はあまりにも理解されなくて、私自身、AIのことを忘れてしまうくらいでしたけど(笑)。
金丸:平野さんが「AIの道で行く」と決めたのが2004年。10年以上たって、ようやく世間が追いついてきた。
平野:だから日本法人を設立し、仕切り直しをして、自社開発以外の受託案件を一気にAI関連に切り替えました。AIが受け入れられる素地ができていたので、今度は順調に受注できましたね。そして受託開発をこなすうちに、いろいろな企業がフォーマットの定まっていない、契約書や領収書といった書類の処理に追われていることがわかってきて。
金丸:フォーマットがバラバラだから、システムに打ち込むためにわざわざ人の手を使って処理しないといけない。大いにムダです。それをAIの力で解決しようと?
平野:はい。シナモンAIが開発した「Flax Scanner(フラックス・スキャナー)」は、AIが文書を読み取り、重要なポイントを要約したり、書類をデジタル化して検索できるようにしたりというサービスです。これは業界・業種を問わず、多くの企業にご利用いただいていて、ようやくマーケットに受け入れられるサービスを生み出すことができたと感じています。
金丸:大企業との提携がよくニュースになっていますよね。今、シナモンAIはどのくらいの規模ですか?
平野:従業員が200人で、顧客は大手企業を中心に100社ほどと、まだまだ小さな会社です。
金丸:これからシナモンAIをどのような企業にしていきたいですか?
平野:お客様の夢を大きくしていける存在を目指しています。それぞれの企業がビジョンやパーパスを設定されていますが、それを超えるお手伝いをしたいんです。実はこの1年くらいで、事業領域を少しずつ広げていくために取り組んできました。というのも、せっかくのAIなのに、コスト削減にしか使えないというのがもったいなくて。
金丸:そもそも日本社会全体が、コスト削減しか頭にないような感じですよね。「新しい事業を始めるために、既存事業のコストを削減しよう」というわけでもなく、コスト削減自体が目的になってしまっている。
平野:そうですよね。人だけでなく、企業も夢を持てていないように感じています。だから、AIの力を戦略立案などもっとインパクトのある、企業の成長に役立てられるようなサービスを作っていきたいんです。
金丸:それは非常に価値のあることだと思います。しかし、また売るのが難しそうなサービスですね。これまでにないものを売るとき、買い手は適正な価格かどうかわからない。コスト削減系のサービスなら、削減できる経費から逆算することができますが、成長のための投資となると、日本企業は出し惜しんでしまう。これが日本が成長できない原因のひとつじゃないかと思います。
平野:そうなんですよね。どうやって売るか、いろいろ悩んだ結果、夢を語るしかないと腹をくくりました。それが私の得意分野ですから。お客様の会社について、私が考える未来を超マシンガントークで話して、「私たちと一緒であれば、それを絵空事ではなく、実現させることができますよ」と。
金丸:いかにも平野さんらしい。夢を持っていない人に夢を語っても引かれるだけです。でも、そこに恐らく未来はありません。一方で、自分自身や自分の会社に夢を持っている人であれば、平野さんの話に惹きつけられるでしょうね。
平野:夢を持っていないと、楽しく仕事もできません。AIがムダな仕事を減らせば、そのぶん、人がやりたいことに集中できる環境ができて、ハッピーに働く人が増えるはず。
金丸:「こんな仕事が何になるんだ」と思っていたら、仕事の効率も上がりませんから。
平野:それに子どもを授かってからは、特に過労死のような労働問題をいつまでも残していてはダメだと感じています。
金丸:平野さんは現在、妊娠中だそうですね。
平野:はい。3人目ですが、ようやく安定期に入りました。出産予定は今年4月です。長男は4歳、長女が3歳なので、子どもたちが社会に出て働く頃には、みんなが夢を持って働いている日本にしたいですね。
金丸:平野さんのトークには人を奮い立たせる力があります。今後、仲間や応援してくれる人がどんどん増えていくと思いますし、私もぜひお手伝いしたいです。一緒に新しい日本を作っていきましょう。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。