2021.10.23
Miss 東大生ハンター Vol.2「バンド活動については、私は特に抵抗ないです。週末の時間の使い方は、話し合い次第かなと思いますが…。あと、もしかして…演奏してるのって、ニルヴァーナですか?」
すると、拓哉の顔がぱっと輝く。
「そう!ニルヴァーナです。桜子さん、わかりますか?僕、あの時代のアメリカの音楽の大ファンで…」
どうやら、彼の心に刺さったらしい。桜子はほっとした。
大学時代、イイ感じになった先輩からアメリカのロックミュージックを色々教えてもらったことが、こんなところで役に立つとは思わなかった。
― そういえば、タケルさん。今どうしてるのかな…。
拓哉の話に相づちを打ちつつ、桜子は、サークルの2学年上の先輩だったタケルのことを思い出す。
麻布高校から東大工学部に進み、岡田将生のような端正な顔立ちをしていた彼は、サークル内でも人気者だった。ニルヴァーナやボン・ジョヴィが好きで、一緒にドライブした時に曲を流してくれたのを、桜子は今でもよく覚えている。
桜子がタケルに思いをはせている一方で、拓哉は延々とロックンロールについて熱く語り続けている。ニルヴァーナがデビューした1980年代から時代はどんどんさかのぼっていき、今や1960年代の話をしている。
― 私から話を振っておいて申し訳ないけど、飽きてきたな…。
話を変えるきっかけを探しつつ、机の下でスマホをチラ見する。すると、カレンダーアプリからの通知が表示されていた。
『明日:14時 サークル同期女子会』
それを見て、桜子はひらめいた。
― そうだ、明日の女子会でタケルさんの近況、聞き出せるかも。もしフリーだったら、もう一度アタックしてみるのもアリ…?
さっきまでは「なんとかつなぎ留めたい」という思いから、頑張って話を合わせていた桜子だったが、今はすっかりテンションが下がっている。
― やっぱり、どう考えても、拓哉さんと結婚はない気がするわ。
結局、桜子は、本音ではタケルさんみたいに少し遊びのある人が好みなのだ。真面目な拓哉さんみたいな人は、しっくりこない。
一方の拓哉は、桜子の頭の中を知る由もなく、まだまだ喋り続ける勢いだ。
桜子はなんとか相づちを打ち続けていたが、聞き役に徹するのもだんだんと疲れてきた。キリの良いところで「明日早いので…」と切り出し、そそくさと帰宅したのだった。
◆
「久しぶり〜!」
「私たち、みんなそろうの1年ぶりじゃない!?」
次の日。
銀座の『THE GREY ROOM』で、桜子含む女子会メンバーの4人は歓声を上げていた。久々の再会に、全員大はしゃぎだ。
桜子が所属していたサークルは、男子は東大、女子は東京女子大・日本女子大・聖心女子大で構成されていた。同じトン女の同期とは仲が良く、卒業後も定期的に集まっている。
「桜子、久しぶり。この前はドタキャンしてホントごめん!」
先週、慶一郎と一緒に会う約束をしていた美由紀も来ていた。桜子は「気にしないで」と微笑む。
近況報告に花を咲かせているうちに、話はサークルの同期はじめ、先輩や後輩のうわさ話に及んでいく。
「ねえ、そういえば聞いた?あの話…」
もったいぶるように話し始めた同期の1人に、「なになに?」と全員の視線が集まる。
「タケルさんと玲香さん、ついに結婚したんだって」
桜子は、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
― タケルさんが結婚…?しかも、聖心の玲香さんと?いつの間に…?
しかし、他の面々はニコニコして盛り上がっている。
「え〜!おめでたい!あの2人、サークル内では伏せてたけど、1年生の時からずっと付き合ってたらしいもんね!」
「ついに実ったんだね〜!」
無邪気な言葉は、桜子の心を矢のように突き刺していく。
― 1年のときからって…。つまり、私とデートしてた時期も、玲香さんと付き合ってたってこと?
実は、桜子は1年生の時、当時3年生だったタケルさんに恋をしていた。ひそかにアタックを続け、何度かデートもした。
しかし、タケルが引退すると徐々に疎遠になり、正式に交際に発展することはなかったのだ。
― 私にもチャンスあるかも、なんて浮かれていたのが、恥ずかしいわ…。
落ち込む桜子をよそに、女子会は2人の話題で持ち切りだ。それまで相づちばかりだった美由紀も、積極的に話し始める。
「今だから言うんだけどね、実は…」
桜子は息を呑んで、次の言葉を待った。
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ショックを受ける桜子に、美由紀のさらなる追い打ちが…。
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