
~この体だからこそできることをやりたい。逆境を覆しつづけてきた自信が、次なる挑戦に繋がる~
2020年のニューリーダーたちに告ぐ
身長170センチと、プロ野球選手としては小柄ながら、ファンによる人気投票では、阪神タイガース歴代ベストナインにも名前が挙がる赤星憲広氏。
最大の武器は「足」。ひとたび出塁すると、高い盗塁成功率で相手チームにプレッシャーをかけた。
9年間の現役時代に5回の盗塁王を獲得するなど、華々しい活躍をみせた赤星氏だが、プロ入りするまでは長い苦難の道を歩んだ。
そして、現役引退を決定づけた中心性脊髄損傷という重い怪我。しかし、今なお野球に対する情熱は失われていない。
プロに至るまで、そして引退してからこれまで、赤星氏は何を考え、どう行動してきたのか。逆境にあっても夢を叶えるために必要なものが、そこから見えてくる。
金丸:本日は元プロ野球選手で、現在は野球解説者として、またタレントとして幅広く活躍されている赤星憲広さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
赤星:こちらこそお招きいただき、ありがとうございます。
金丸:今日はこの秋にオープンしたばかりの西麻布『M2』をご用意しました。元アマンリゾートのコーポレートエグゼクティブシェフによる和牛懐石を堪能できます。こちらの牛は三重県松阪市に縁をもつ松吉牧場の「松吉牛」。オーガニックの飼料で通常の1.5倍ほどの期間をかけて育てるため、「生きたまま熟成させる」とも評されているそうです。
赤星:そんなお話を聞くと、ますます楽しみになってきました。この空間もとても素敵ですね。
金丸:早速ですが、最近はどのように過ごされていますか?新型コロナウイルスの影響はいかがですか?
赤星:プロ野球は開幕が3ヶ月遅れ、講演やトークショーもなくなりました。でも、テレビ番組のレギュラーはリモート出演も含め通常通りで、個人的にはそこまで大きな影響はありません。ただ、球団によっては、すでにかなり厳しい経営状況のところもあるのではないかと。
金丸:それでもほかのスポーツに比べると、野球はまだいいほうですよね。
赤星:そう思います。今年は高校生のインターハイも全部中止になりました。特に3年生は、悔しいという言葉では表せないくらいショックだったでしょう。それでも野球は、全都道府県で地区大会が実施されました。「野球って、やっぱり力があるんだな」と改めて思いましたね。
金丸:プロ野球が開催を決定したことで、ほかのプロスポーツも追随するようなかたちになりましたし。野球の熱狂的なファンにとっては、球場に行くというのが生活の一部になっています。制限があるとはいえ、また球場で応援できるようになってよかった。選手のほうも観客が入っているかどうかで全然違いますよね。
赤星:間違いなく選手のやる気は変わりますよ。
金丸:実は私は大の阪神ファンで、赤星さんのご活躍をずっと見てきました。野球選手としては小柄で、プロ入り前もプロになってからも、ほかの選手以上に苦労をされたかと思います。プロとしての活躍は皆が知るところですから、そこに至るまでの道のりも今日はじっくり伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
子どもの頃から俊足ながら、決して1位ばかりではなかった
金丸:お生まれはどちらですか?
赤星:愛知県刈谷市です。
金丸:ということは、もともとは中日ドラゴンズファンですか?
赤星:熱狂的なドラゴンズファンです。小学生の頃からナゴヤ球場(ドラゴンズの元本拠地球場)に通っていました。
金丸:小学生から!筋金入りですね。
赤星:ナゴヤ球場では7回以降、小学生は外野席に無料で入れたんです。球場の周りでラジオを聴いているおじさんたちと一緒に応援して、6回裏が終わると「行ってこい!」と送り出され、中に入ると、今度は応援団の人たちがご飯や飲み物を買ってくれる。残りの3イニングは、それを食べながら応援するのが僕の日課になっていました。
金丸:いい話ですね。そもそも野球にのめり込んだきっかけはなんだったのでしょう?
赤星:うちはテレビで相撲と野球とプロレスしか見せない、という変わった家だったんですよ。
金丸:うちとそっくりだ(笑)。私もドラマや歌番組を見た記憶がありません。
赤星:父はスポーツが大好きで、地元の少年野球チームで指導していましたし、母も陸上をやっていて。だから僕も自然とスポーツをやるようになりました。
金丸:では、子どもの頃から野球一筋だったんですか?