モラトリアムの女たち Vol.3

「仕事が育児の息抜きなの」“充実ぶり”をアピールするワーママに、専業主婦の女が放った一言

何不自由ない生活なのに、なぜか満たされない。

湾岸エリアのタワマンで、優しい夫とかわいらしい娘に囲まれ、専業主婦として生きる女。

ーあのときキャリアを捨てたのは、間違いだった?

“ママ”として生きることを決意したはずの“元・バリキャリ女”は、迷い、何を選択する?

◆これまでのあらすじ

湾岸のマンションで育児に専念中の未希は、元々バリキャリ志向の女だった。

ママ友・華子の復職に心がざわつきながらも、同じママ友で専業主婦をしているまりあの価値観にも、イマイチ同意できない。未希は複雑な胸のうちに戸惑うのだった…。

▶前回:「旦那さんの稼ぎ少ないの?」タワマンのゲストルームで露呈した、女たちの静かなバトル


「私、結婚前は赤坂の美容クリニックで看護師してたんだけどね。正直、仕事が楽しいなんて思ったことなかったなあ」

日比谷公園への散歩帰りに寄った、東急プラザの『THE APOLLO』。ランチをしながら、まりあはため息交じりにつぶやく。

未希は華子主催のお茶会以来、まりあと出掛ける機会が増えた。

価値観が違う部分は多々あるが、未希はまっすぐで屈託のない彼女に引き寄せられるものを感じている。そして何よりも、互いの子どもが仲良く楽しそうなのが一緒にいて心地いいのだ。

「じゃあ専業主婦になったのは、願ったり叶ったりだったんだ」

未希はまりあのボヤキに、笑いながら尋ねた。

「そ。こう見えて独身の頃、赤坂とか六本木の辺りが遊び場で…。早く結婚して仕事辞めさせてくれそうな男を探して、見つけたのが今の夫なの」

「旦那さん、外資の証券マンなんだっけ」

「うん。忙しい人だけどね」

鮮やかなネイルに彩られた指先で口元を拭きながら、まりあは微笑んだ。輝いた笑顔が日々の幸せぶりを物語っている。

彼女はいわゆる港区女子という存在だったのだろう。

30歳前にハイスぺ男性と結婚し、タワマンに住む専業主婦となったまりあは、そのくくりの女子たちにとっての成功例だと未希は思った。

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