繰り返すが、進太郎は女性とまともに付き合ったことがない。申し込まれてデートすることがあっても、深い付き合いにはならない。
それも当然の話だ。だって、進太郎から全てお断りしているのだから。
女性に興味がないわけでも、結婚願望がないわけでもない。
だが、これまで“ビビビ”とくる女性に出会ったことがないのだ。
理想が高いのだろうか。そんなはずはない。自分が求めているのは、最低限のルックス、最低限のマナー、最低限の教養だ。
ド派手な洋服を着たり、髪色が明るい女性は無理。
箸の持ち方や所作が美しいのは当然で、例えば食事中に、チャイコフスキーの代表作“花のワルツ”が流れた瞬間に、「くるみ割り人形」が出てこない女性は有りえない。
敬語が適切に使えないのも困るし、ガハガハ大笑いする女性や、記憶をなくすほど酔っ払う女性もNG。
多くの男性が持っている、いたって普通の理想だと思う。
だから、自分はまだ運命の人と出会っていないだけ。どこかにいるのだ。きっと出会える。
そう思って運命の相手を待って、早29年。
相手に言い寄られてつきあった経験はあるものの、そのどれもが長続きせず。
自分にはもっと良い人がいると、オサラバしてきた。
−1年か。
進太郎は、母親から提示された期限を思い出していた。
こんな期限、適当に聞き流しておけば良いかもしれないが、これまでの母親の行動から考えると、1年後に勝手に見合いで結婚を決めてくる可能性は非常に高い。
結婚相手くらい、自分で見つけたいと思っている。
だが、しかし。29年間、運命の相手どころかその候補も見つけられなかった進太郎にとって、1年間で結婚まで漕ぎ着けるというのは至難の技。
これまでと同じ方法でやっていては埒が明かない。合理的に、効率的にやらなくてはならないのだ。
そう考えた進太郎は、デスクに置いてあったノートパソコンを立ち上げた。
検索キーワードは、「結婚相談所」
“1年以内に結婚したいあなたへ”
“運命の相手と出会えます”
検索結果には、そんな言葉がズラリと並んでいる。
結婚相談所であれば、自分の条件に合った女性と短期間で出会い、結婚出来るのではないだろうか。そう考えたのだ。
とはいえ、結婚相談所も沢山ある。どれが自分に合うのか、よく分からない。
どうすべきか考えあぐねていた進太郎の目に飛び込んできたのは、“1ヶ月以内のデート成功率75%”の文字だった。
さらに惹かれたのは、“結婚相手は自分で探す”というキャッチコピー。
費用も、想像以上にリーズナブル。サポートは電話が中心という点も、忙しい自分にとってはありがたい。
ここだ!と、直感的に感じ取った進太郎は、すぐに、その結婚相談所のカウンセリング予約を申し込んだ。
カウンセリングの予約を終えた進太郎は、体験記を読みながら胸を躍らせた。
結婚相談所で出会ったカップルは、皆、出会ってから半年以内に結婚を決めているようだ。
中には、1ヶ月でゴールインというカップルも。
“ビビビ”ときたら、こんなにも早いものかと、進太郎は驚く。
−1年後には結婚してたりして。
浮かれる進太郎だが、この時彼は、まだ自分が恋愛できない、“本当の理由”に気づいていなかった。
▶︎Next:4月14日 火曜公開予定
オファーが殺到する進太郎。だが、相談所のカウンセラーは進太郎にある疑問を抱いていた…?
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この記事へのコメント
男→涼しげな目+身長180サンチ
女→アーモンドアイ+透き通るような白い肌
うるせえよw
結婚しなくていいんじゃない?
ひとりがあってる気がするよ。