SPECIAL TALK Vol.64

~30年間、見続けてきたから日本はもう一度輝く、と信じている~

世界標準に合わせなければ、日本人が圧迫される

金丸:最近、日本社会で格差が広がったと言われています。高所得者層と低所得者層の差が広がり、年収300万円以下の人が労働人口の40%を超えました。それに世代間格差も顕著で、日本の個人資産の3分の2は、60歳以上が保有しています。

羅:格差は避けられない問題ですよね。これからも格差はますます広がっていくと思います。でも、落差があるから水力発電ができるように、格差があるということは、上を目指すためのパワーにもなり得ます。でも注意しないといけないのは、格差はコントロールしないといけないということ。香港のように、極端な金持ちと極端な貧乏人ばかりになると、それが社会不安につながります。

金丸:そうですね。派遣労働の問題もきちんとバランスを取って、解決しながら進めないといけません。だけどそこで必ずぶち当たるのが、既得権益の壁で、医療費にしても高齢者が優遇されていて、そこにものすごくお金を使っています。でもいずれは中国も高齢社会に突入していきますよね。

羅:なるでしょうね。社会福祉施設の設立が足りないと、すでに問題になっています。

金丸:今、中国で病気になったら、すぐ病院に行けるのですか?

羅:もちろん行けますよ。ただ、僕は中国の病院には絶対に行きたくない(笑)。とにかく混むんです。どんなにいい病院でも場所が足りなくて、待合室の通路に座って点滴を受けている人がいるくらい。日本の病院はそんなに規模が大きくなくても、サービスも含めてちゃんとしていますからね。だから日本は、中国の成長にうまく便乗して、中国のマーケットを利用しながら日本の課題を解決すればいいんです。最近だと、たとえばニセコが観光地として非常に注目されています。

金丸:中国でも人気があるんですね。

羅:ありますよ。ニセコだけじゃなくいろいろなリゾート地で、明らかに日本人向けではない物件が増えています。たとえばヴィラを20〜30戸建てて、1戸15億円で売られていたりします。

金丸:確かに日本人で買える人は限られますね。

羅:海外の超富裕層向けですよ。すでにそういう極端な場所が、国内でできつつあるということです。

金丸:今、中国で資産が1億円を超える人ってどのくらいいるんでしょう?

羅:2〜3億人いるんじゃないですか。不動産が高いから、香港だとちょっとしたワンルームでも億万長者レベルになってしまう。

金丸:じゃあ不動産を除きましょうか(笑)。

羅:それだとかなり減りますが、それでもおそらく日本の人口くらいはいるでしょうね。

金丸:やはりスケールが違いますね。

羅:これからは「仕事は中国でするけど、別荘は日本に持つ」という人が珍しくなくなりますよ。欧米は中国人が不動産を買うのに規制をかけはじめています。するとお金の行き場がなくなって、日本に流れる量が増える。だから、いい物件はまた値段が上がるはずです。

金丸:かつて日本人がハワイに別荘を持ったのと同じ感覚で、中国人が日本に別荘を買うわけですか?

羅:日本のほうがハワイより近いし、手頃です。1億や2億なんて、中国の富裕層にとっては何でもない。物件だけじゃなく、日本の食品とか農作物もいずれはほとんどが中国に輸出されるようになるんじゃないかと。

金丸:日本のいいものを中国の人がどんどん買って、日本人が食べられなくなる日が来るかもしれませんね。

羅:日本では「いいものを安く」と言いますが、僕はそれはおかしいと思う。やはりいいものは高く売る、という経済原理に立ち返るべきです。日本の従来のマーケットで常識とされてきたことと、グローバルマーケットの発想は全然違います。グローバル経済に合わせて、日本も意識を変えていかないといけない。このままじゃ日本人自身が圧迫されますよ。現に今、日本の三ツ星レストランは、「いいものにはいくらでもお金を出す」という外国人で満員になっていますから。

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