SPECIAL TALK Vol.64

~30年間、見続けてきたから日本はもう一度輝く、と信じている~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。

安すぎる牛丼が日本の象徴。1,200円で売るべき

羅:僕は日本の改善すべきポイントを象徴するのが、牛丼屋だと思います。おいしいんだけど、やはり安すぎる。

金丸:そうですね。羅さんだったら牛丼にいくら出しますか?

羅:1,200円くらいかな(笑)。

金丸:素晴らしい(笑)。価格競争がひどかった頃は、380円をさらに値下げして、1杯280円で売っていましたよね。値下げして売るから利益が出ない。利益が出ないから、人件費を上げられない。するとアルバイトが集まらないから、今度はロボットを導入して。

羅:100円下げると売上が倍増して、しかも給料に還元できるのならいいんだけど。でも問題は提供者側だけでなく、消費者側にもあると思いますよ。たとえばたった10円安いだけなのに、そのために並ぶじゃないですか。すごい長い行列を作って。

金丸:おかしな話ですよね。

羅:「価値=価格」という感覚が、日本の大きな問題です。価値と価格は同じものじゃない。バランスがある。そこはもう一度、グローバルの洗礼を受けないと目が覚めないのかもしれません。本当にもったいない。

金丸:しかも安いものを求めることが、結局、自分の首を絞めているということを自覚していません。

羅:人を安く使わざるを得ないから、悪循環になる。日本がデフレから20年も30年も抜け出せない原因は、そこにあります。それに政府の誘導もちょっと足りないですよね。日銀が2%のインフレ目標を立てたけど、まったく達成できていない。日本が再び元気になるには、もっと若い人たちにチャンスを与えないとダメだと思います。

金丸:私もそう思います。高齢者には早く引退してもらって、世代交代を進めたほうがいい。今の高齢者層は成功体験があるから、変わろうとしても全部が中途半端なんです。一方で、若い人たちはデフレの日本しか知らないから、もう攻めるしかないというマインドを持っている。若い人たちに頑張ってもらったほうが、必ず大きな変化が生まれるはずです。ところで、中国では、若者にもチャンスが多いんですか?

羅:多いですよ。中国では僕くらいの年だともう引退してますから(笑)。中国企業で活躍しているのは、30代がメインです。

金丸:なるほど、それはうらやましい状況ですね。

羅:実際のところ、われわれも中国では幹部を採用できないんですよ。なぜなら若い人の給料が、日本人の感覚だと高すぎるから。下手すれば、社長の僕より高い(笑)。

金丸:日本の社員が知ったらハレーションが起きますね(笑)。

羅:ええ。若いし、高いし、流動性も非常にある。

金丸:日本だといまだに一つの会社にかじりつく人も少なくありません。

羅:僕がもう一つ言いたいのは、日本の若者には、失敗するチャンス、もっと言えば失敗しても再起するチャンスを与えるべきです。日本では一度失敗したら、一生誰も相手にしてくれません。一度破産したら、銀行は二度と取引してくれない。

金丸:失敗から学ぶことはいくらでもあるのに、本当にもったいない。

羅:中国には失敗した人がたくさんいます。でも「今日倒産しても、明日また再起する」ことが可能なんです。事業が倒産したら、また次の人生が始まるだけ。

金丸:日本とは真逆ですね。日本だと敗者復活戦がない。ペナルティが一生ついてまわります。

羅:厳しいですよね。でもこれも変わると思います。日本もこれからは、失敗を許容できる社会になっていくでしょう。

若者だけでなく企業もリスク意識を変革して挑戦を

金丸:最近の中国企業を見ていると、従来の外資以上に外資企業っぽさを感じます。オフィスもシリコンバレーのような雰囲気で。

羅:オフィスはきれいだし、ビルは大きく空間を贅沢に使っています。中にはコンビニやレストランがあって、働きやすい環境です。

金丸:そういう現実を知らない人がまだまだ多い。日本の大企業の遅れ具合は半端ないですよ。

羅:日本企業の場合、レストランやカフェというより、「食堂」というイメージですよね。

金丸:働く環境にはあまりお金をかけないので、残念ながら世界で最も働きにくいのが、日本企業になりつつあります。

羅:そのかわり、大企業には多額の資金が貯まっている。そのお金を投資に回すなど、社会に還元してほしいものです。

金丸:内部留保が500兆円に近いですからね。

羅:それこそ国は、課税の方法をちゃんと考えるべきですよ。会社の規模に合わせて基準を設定し、それ以上のキャッシュがあれば何%取るというような。あるいは、無償で銀行に預けてもらうとか。

金丸:投資もしないし、社員の給料にも還元しないとなると、ただの死に金です。

羅:本当にもったいない。中国の不動産会社にとって1兆円、2兆円の投資は当たり前の世界で、とにかく規模が大きいんです。でも自己資本比率は1割くらいですよ。

金丸:日本ではありえないですね。

羅:もちろん危険な面もあるけど、成長している国だからこそ収益性も高い。何兆円という負債を抱えながら、何千億円という利益を毎年出しています。だからますます成長できる。日本では「若い人がダメだ」と言われるけど、企業がリスクを避けることだって問題です。社会全体が保守的で、リスクを取らないようにしています。その意識を変えない限り、成長には向かいません。

金丸:なるほど。それでは逆に、我々の意識を変えることが出来たなら、日本は復活できると思われますか?

羅:もちろん。常に新しいもの、いいものを吸収して、それを匠の精神でよりよいものにして付加価値をつける。それが日本のすごいところだし、真骨頂ですから。

金丸:世界がまだ日本に関心を持っているうちに、より多くの日本人が挑戦し、成功してほしいですね。今日の羅さんのお話から、そのために必要なチャレンジスピリットを学べました。今日は本当にありがとうございました。

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