2020.01.21
SPECIAL TALK Vol.642020年のニューリーダーに告ぐ
社会現象にまでなった、中国人観光客による「爆買い」。その象徴となった免税店の「ラオックス」は今、単に「モノ」を売るだけでなく、日本の優れたものを海外に広めるべく、体質改善を進めている。
ラオックス株式会社社長を務める羅 怡文(ら・いぶん)氏は、30年前、中国からの留学生として初めて日本を訪れ、在学中に起業。テレビ局の運営や雑誌の出版を経て、2009年、出資を機にラオックス社長に就任した。
「日本の可能性を信じているから日本にいる」と語る羅氏。中国人として、また事業家として感じる日本の可能性とは何か。もう一度復活するために、日本にはどのような挑戦が必要なのか。
金丸:本日のゲストはラオックス株式会社の羅 怡文(ら・いぶん)社長です。お忙しいところ、ありがとうございます。
羅:ご指名いただきありがとうございます。
金丸:今日は会場として『NEW CITY CLUB OF TOKYO』のフレンチをご用意いただきました。こちらは2017年に設立したラオックスのグループ会社が運営しているそうですね。
羅:ええ。『NEW CITY CLUB OF TOKYO』は会員制の社交クラブですが、プライベートなシチュエーションでもご利用いただけます。これから日本もグローバル社会になっていくなかで、海外にあるような接待や交際の場所が必要だと感じて作りました。
金丸:とても素敵な空間ですね。お料理も非常に楽しみです。
羅:ありがとうございます。やる以上はやっぱりいいもの作らないと。楽しんでいただければ嬉しいです。
金丸:さて、羅さんは中国から日本に留学し、起業されていますね。
羅:はい。大学在学中に日本にいる中国人向けの新聞を発行したのがきっかけで、起業しました。その後、中国で製作された映像を日本で放映するためのテレビ局の運営や、免税店の事業にも携わり、2009年、中国家電量販店の最大手と共同で出資するのを機に、ラオックス社長に就任しました。
金丸:ラオックスは、何の会社と呼ぶのが適切なのでしょう? もともとは家電を取り扱っていましたよね。
羅:家電から免税店になって、今は小売がメインです。それから規模は小さいですが不動産も手掛けていますし、海外輸出もかなり成長しつつあります。いずれにせよ日本のよさを伝えるということが、われわれのコンセプトです。
金丸:確か、カタログギフトで知られる「シャディ」も子会社にされましたね。
羅:2018年のことですね。中国にも日本と同じような贈答文化がありますが、商品の種類が限られています。その点、シャディはバラエティに富んだ品揃えが魅力的でした。
金丸:ラオックスのターゲットは、中国人がメインですか? それとももっと広く、アジア全域?
羅:今は中国のお客様が多いですね。しかし、これからは国籍・人種を問わず多くの人に受け入れられるようにしていきたいと思っています。そのために「グローバルライフスタイル」という考え方の店づくりを進めています。言語や文化の壁を超えて、真に価値があるモノやサービスを提供していこうと、そのコンセプトを体現する新店舗を近く大阪に構える予定です。
金丸:どんなお店になるのですか?
羅:従来の店舗であれば、1階は家電製品や化粧品のフロアでした。
金丸:そういう商品を爆買いする中国人の映像が、ニュースでよく流れましたね。
羅:でも時代は変わりました。新店舗では1階を全部、高級食材のフロアにする計画です。外国人も日本の食にものすごく興味を持っていますから、食で勝負しようと。それに日本の食材だけでなく、中国で急成長中のパン屋さんに日本に初出店しないかと交渉しているところです。
金丸:日本のいいものを紹介するだけではなく、海外のいいものを日本に紹介する、ということですね。
羅:そうですね。今やモノや文化の動きは一方向ではなく、双方向になりました。最近だとタピオカミルクティーが大流行しましたが、これも台湾発のブームです。日本の生活もグローバルになっているし、そもそも日本人は昔から海外のものを取り入れるのが非常にうまい。食文化にしても、中国人は99%中華料理しか食べないけど、日本人はあらゆるジャンルを食べますよね(笑)。いいものはどんどん吸収して、よりよくしていくというのが、日本の原動力じゃないかと。
金丸:それが日本の強みなんですが、今は停滞していますよね。
羅:でも、僕は日本の経済は不滅だと思っています。だからこそ、僕は30年間日本にいるんです。もちろん居心地がいいということもあるけど、やっぱり日本がもう一度、経済も文化も世界的に影響力のある国になることは間違いないと信じているし、それを楽しみにしているんです。
金丸:羅さんにそう言っていただけると心強いです。今日は日本と中国の両方をよく知る羅さんに、これから日本が選ぶべき道について、じっくりお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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