“結婚なんて人生の墓場だからさ―”
しばしば見られる、そう語るのとは裏腹になんと満足気な表情の男たちよ…。
そう、彼らが伝えたいのは、間違っても“結婚を後悔している俺”なのではなく“結婚というライフイベントを経験した(できた)俺”なのだ。
その真実にたどり着いた(真実だと思い込んだ)一人のハイスペック理系男子・紺野優作28歳。
「偽装婚活」一挙に全話おさらい!
第1話:「結婚は人生の墓場」既婚男の建前と本音を知り、焦り出す28歳独身男
僕はビールを飲みながら、相づちの回数をカウントしていた。これは会話が劇的につまらないときの僕のクセ。
さっきから大学のゼミのOBで、ロボット界では名の通る都築さんが結婚生活について熱く語っている。
ロボットへの情熱において意気投合した僕らは、たまにロボット会談なるものを催していたのだが、あるとき彼に彼女(現在の嫁)ができてから、会話の中身がだんだんとおかしな方向へ進み始めた。
僕は40過ぎのおっさんの恋愛相談、そして彼が結婚してからは結婚生活の相談に乗る羽目になってしまったのだ。
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第2話:結婚願望のない男の心が、思わず揺らいだ・・・。チャラ男を激変させた“いい妻”の特徴とは
久しぶりに学生時代の5人で会った夜から、“結婚”というワードは“キー”ワードに登り詰めつつあるのだ。
4人が、結婚を決めた大毅を想起したときに見せた表情は、学生時代、たとえば“数学の神”の称号を手にしていたようなクラスメートに向けられる眼差しとほぼ同じだった。
―”数学の神”を崇めていたはずの4人が、チャラ男・大毅に改宗か…。
まさか、僕が栃木にいた4年間に、皆の人生観が変わったとでもいうのだろうか?
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第3話:「コンタクトが乾いてきたので帰りまーす♡」男がSクラス美女に食らった、衝撃の断り文句
―この季節にノースリーブか…。
目の前の女性に、思わず目を奪われる。
ぱさっと羽が舞うかのように脱いだトレンチコートから露になった華奢な二の腕。見つめてしまうのは男の性だが、いささか気温とマッチしない服装に疑問を抱く。
今日は、東京で初の食事会に参戦していた。“既婚者になる”と決意を固めた僕は、学生時代からの友人の一人・タクミ(総合商社勤務)にまず宣言をし、女性の紹介を頼んだのだ。
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第4話:「結婚した方が体裁がいい」初デートで暴走する理系男に、女が2度目のチャンスを与えた理由
バーベキューの日、自宅に帰った僕はLINEのトーク上で手を振るクマと格闘していた。
同僚のマイケル、芽衣子の3人で、丸の内勤務が新橋の店で出会った偶然を祝おうだのと適当な口実をつくって飲み直し、手に入れた芽衣子の連絡先。
QRコードを読み取り「じゃあ何か送っておきますね」と言った芽衣子が寄越したのがこのクマなのだ。そのクマにぶつけるべき言葉がなかなか見つからない。
―ああ、面倒くさくなってきた・・・
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第5話:「今夜は、ちょっと・・・」食事会後、“2人きりで飲もう”という女の誘いを男が断った理由とは
「ねぇ、私のこと覚えてないの?」
不敵な笑みで、彼女は僕に話しかけた。程よく開いた胸元から見える鎖骨と白い肌。リサより露出は少なめなのに、色っぽさをより感じた。一粒のダイヤが、白い肌によく映える。
―芽衣子も光物が好きだろうか?
芽衣子と何も関連性がないこの場で、ふいに彼女を思い起こしたことを不思議に思う。
「優作くん?」
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第6話:「まさか彼が既婚者だったなんて・・・」29歳女が男の秘密を知ってしまった、意外なきっかけ
19時に代々木上原駅で環奈と待ち合わせた。最初、彼女が提案してきたのは昼間の表参道だ。「このお店なんてどう?」と送られてきたURLを思わず二度見する。
店名は『アニヴェルセルカフェ』。さすがに芽衣子とデートで訪れた店に行くのはためらわれて、僕は適当に理由をつくって店を変えてもらったのだ。
―それにしても何で代々木上原?
千代田線ならどこでもいいとは言ったが、意外な選択だ。そんなことを思いつつ2階の改札から出口へと下るエスカレーターを地上から見上げるように眺めていると、環奈はすたすたと、地上から歩いて現れた。
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第7話:「女から求められるの、嫌なんだ・・・」元彼がトラウマで、好きな男を拒否する25歳女
“あのバッグがほしい”“あの店で食事がしたい”…
その欲深さを幼いと笑うものもいるが、僕は逆に好感を覚えていた。欲望に素直であって何がいけないのか。強欲さを隠そうとするしたたかさの方が嫌いなのだ。
結局のところ僕は、環奈が自らの欲求に気づかないフリをしてその場に留まり続け悩む意味が分からなかった。
そのとき、ポケットのスマホが震えた。
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第8話:「私、初めてなの…」25歳女の告白を無視した男のホンネとは
彼女に手首を掴まれ、「待って」と抵抗されたとき、はっと我に返る。頭にモヤがかかったまま、状況が整理できない。
“初めてで怖い…”
理性より本能や欲望が優先されている瞬間には、誰かの感情などどうしてもすんなりと入ってこない。
いや、もしかすると男の欲求を飼いならせている者ならばすんなりと正常な状態に戻ることができるのかもしれないが、僕は5年ぶりの状況で、完全に欲求に飼い殺されていた。
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第9話:年収1,000万の大企業を辞めて、転職に悩む男。女がかけるべき言葉とは
「…ねえ、優作君、聞こえてる?」
芽衣子の『関係を切ってくれて構わない』という発言に僕はうなだれてしまい、スマホを投げ捨てたまま、しばらく言葉を失う。
すっかり電話は切れてしまっているものだと思っていたが、沈黙に耐えかねた彼女の不安そうな声が電話越しにかすかに届いた。
そして、僕はハッと気づく。彼女は僕の言葉を待っている、ということに。
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第10話:「彼を、家に呼びたくない・・・」ハイスペ男との“格差”に悩む、女の不安とは
僕としては去っていった広瀬さんが、『奥さんにお金の苦労だけはさせないと誓った』と語っていたことが印象的で、ベンチャーに転職しても貧しくなるわけではないことを芽衣子に印象付けるため、今日からでもなるべく余裕のある姿を見せておこうと思ったのだ。
「気にしなくていいんだよ。僕がご馳走するんだし」
芽衣子は声のトーンを落としたまま、静かにありがとう、と言った。最後のデザートを食べ終えて、僕はナプキンをたたみ、立ち上がる。
「さあ、行こうか。今日のメインである君の新居へ」
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第11話:「私の成功を祝ってくれないの?」女が名誉を手に入れた時の、男の反応とは
『優作君の普通が、私の基準だと全然普通じゃない―』
涙をこらえようとする芽衣子を前にして、僕は困惑するより先に腕が伸びて彼女を包み込んでいた。
ちょうど顎の下に彼女の頭が収まって、全身で柔らかさと人肌の温もりを感じる。その心地良さにどっぷりと沈むように浸りながら、ふいに行動が思考より先をいったことを知り自分自身に対して驚いてしまった。
「あっ、ごめん…、つい…」
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