偽装婚活 Vol.5

「今夜は、ちょっと・・・」食事会後、“2人きりで飲もう”という女の誘いを男が断った理由とは

東大出身の、ハイスペック理系男子・紺野優作28歳。

ハイスペック揃いの仲間内で“平均以上”を死守することを至上命題としてきた優作。

そのポジションを維持するため、今、次のステージ「結婚」へと立ち上がることを決意する―。

◆これまでのあらすじ

大手メーカーでロボット研究をする優作は、4年ぶりに東京へ戻ってきた

周囲が結婚を自分事として捉え始めたことに気づき、結婚できない男と評されることを恐れた優作は、婚活を始め、バーベキューで芽衣子と出会う。

初デートでは芽衣子の機嫌を損ねながらも、2回目のデートを約束したが……?


「へぇ。じゃあ本当は出版社とか広告代理店で働きたかったんだ」

今日は芽衣子と2回目のデート。昼下がり、表参道の『アニヴェルセルカフェ』のテラス席にいる僕らは、秋の柔らかな日差しに包まれていた。

用意してきたいくつかの質問を、彼女は機嫌よく答えてくれる。

「そう。ずっと、書くことが好きで。編集者とかコピーライターとかになりたかったんです。でも1つも内定もらえなくて、今の会社に」

芽衣子は、もう過去のことだ、という口調で答える。未練がなくアッサリしているが僕はそれが逆に気になった。

「そうなんだ。まだ全然遅くないと思うけど」

すると、彼女はぶんぶんと頭を振り、恥ずかしそうに打ち明けた。

「今は、小説を書いていて。書き上げたけど、それだけで…」

「なんで?じゃあ僕に見せてみればいいじゃないか」

僕が手を差し出すジェスチャーをすると、芽衣子は照れながら、嫌だと駄々をこねた。

「でも温めてても仕方ないだろう?ロボットもさ、とにかく動かすんだ。動かしたもん勝ちというか。どれだけ考えてても、秘めとくだけじゃダメなんだ」

喉が渇き、ティーカップに口をつける。そしてふと気づく。

―また1人で語ってしまった…!

前回のミスを再び起こすという致命傷。

しかし芽衣子は澄んだ瞳でこちらをじっと見つめているだけだった。

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