偽装婚活 Vol.2

結婚願望のない男の心が、思わず揺らいだ・・・。チャラ男を激変させた“いい妻”の特徴とは

“結婚なんて人生の墓場だからさ―”

男たちが語る言葉とは裏腹に、その顔には満足気な表情が浮かんでいる。

そう、彼らが伝えたいのは、“結婚を後悔している俺”ではなく“結婚というライフイベントを経験した俺”。

その真実に辿り着いた(真実だと思い込んだ)、一人のハイスペック理系男子・紺野優作28歳。

ハイスペック揃いの仲間内で“平均以上”を死守することを至上命題としてきた優作は、そのポジションを維持するため、今、次のステージへ立ち上がることを決意する―。

◆これまでのあらすじ

大手メーカーの研究施設で働いていた優作は異動で4年ぶりに東京へ。

仲間たちが知らぬ間に“結婚”を自分事として捉え始めていることにはたと気づかされ内心驚く中、とどめを刺すかの如く、チャラ男認定していた大毅の結婚を知るのだった。


「いらっしゃい。優作くん。忙しいところありがとう」

つい先日第3子が生まれた浜松町の姉宅を訪れると、義兄が僕を迎えてくれた。

風貌は大毅のように一見チャラそうに見えるのだが、代理店勤務のこの義兄に僕は意外と好感を抱いている。きっかけは初対面の夜だろう。

「どこの大学に通っているんですか?」
「東京の大学です」

理由がなければ、僕は必ず“の”を挟む。“東京大学”と答えると、皆興味津々に専攻はなんだとか、色々と突っ込みを入れるくせして、説明の終盤には僕の話が冗長だと言わんばかりに瞼をゆっくりと落とし始めるからだ。

しかし義兄との初対面の夜、東京大学に通っていることが結局バレてしまったが、彼はこう言っただけだった。

「学ぶことが好きっていいですよね」

義兄の簡潔な賞賛を僕は気に入った。

両腕におさまった3000グラムほどの赤子がもぞもぞと動く。これが結婚の果てらしい。姉の赤子を抱くのは3度目だが、“結婚”というワードが初めて頭によぎる。

久しぶりに学生時代の5人で会った夜から、“結婚”というワードは“キー”ワードに登り詰めつつあるのだ。

4人が、結婚を決めた大毅を想起したときに見せた表情は、学生時代、たとえば“数学の神”の称号を手にしていたようなクラスメートに向けられる眼差しとほぼ同じだった。

―”数学の神”を崇めていたはずの4人が、チャラ男・大毅に改宗か…。

まさか、僕が栃木にいた4年間に、皆の人生観が変わったとでもいうのだろうか?

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