偽装婚活 Vol.8

「私、初めてなの…」25歳女の告白を無視した男のホンネとは

東大出身の、理系男子・紺野優作28歳。

ハイスペック揃いの仲間内で“平均以上”を死守することを至上命題としてきた優作。

そのポジションを維持するため、今、次のステージ「結婚」へと立ち上がることを決意する―。

◆これまでのあらすじ

優作はバーベキューで芽衣子と出会い、交際を始める。

一方で、大手広告代理店のコピーライターとなった大学の同級生・環奈とも再会するが、仕事の悩みを吐露され泣き出されてしまう。

そんな矢先、芽衣子から男性経験がないことを告げられた優作。見栄のために婚活を始めた男の行く末とは―?


「初めてなの、ごめん…」

今にも泣きだしそうな表情で打ち明けた芽衣子。

僕はその告白を受けたとき、適切な言葉をなかなか見出すことができなかった。言い訳ができるのならば、芽衣子とベッドにいた僕は、すでに理性より本能が勝る状態だったのだ。

彼女に手首を掴まれ、「待って」と抵抗されたとき、はっと我に返る。頭にモヤがかかったまま、状況が整理できない。

“初めてで怖い…”

理性より本能や欲望が優先されている瞬間には、誰かの感情などどうしてもすんなりと入ってこない。

いや、もしかすると男の欲求を飼いならせている者ならばすんなりと正常な状態に戻ることができるのかもしれないが、僕は5年ぶりの状況で、完全に欲求に飼い殺されていた。

時刻は25時すぎ。

閉口する僕を残して部屋を去った芽衣子が、東横線に乗り長い道のりを1人で帰っていったことを思う。

―一体、何て言えば正解だった…?

頭の中をぐるぐると問いが巡る。答えが分からないのはもどかしい。逆に難問だからこそ好奇心をそそられることもある。

しかし研究者として問題にぶち当たったときとは、決定的に何かが異なっている。

「ああ、もう!」

僕はベッドに倒れこみ、1人で唸り声をあげた。

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