200億の女 Vol.16

「ずっと騙されてたんだ…」夫の裏切りが確定した時、絶望した女が決意したこと

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

◆これまでのあらすじ

詐欺師の罠をかわしたかに見えた智だったが、仕事の大舞台でのトラブルを詐欺師に救われ、ついに男に心を許してしまう。さらに、詐欺師は夫に接触「あなたの奥さんが好きです」と宣言する。そして、詐欺師と付き合っていた智の部下の富田までもが不穏な動きを…。


「神崎さんと小川さんが最初に会ったのは…本当は、どこだったんでしょう?私が自分の恋人だと彼を紹介した時、お2人は本当は、初対面じゃなかったんじゃないかなって」

「どうして、そう思うの?」

「…ごめんなさい。意地悪い聞き方になっちゃいました。本当は、知ってます。親太郎さんが言ったから」

ー小川さんが…?

確かには私は以前、小川さんに自ら、初対面ではなかったと告白したことがある。でも、それをなぜ今になって富田に?それに、あの時小川さんは、私のことを思い出した様子はなかったのに…。

考え込みそうになり、ハッとした。会社で話すべき話題ではない。富田を、そう諭すべきだと思ったが、その追い詰められたような表情に、私は言葉を変えざるを得なかった。

「その方がいいと思ったの。あなたに小川さんを紹介された時、小川さんは私のことを忘れてる感じだったし、わざわざ言い出しにくかった、というのもあるわ。前にお会いしましたよね、なんて部下の恋人に向かって…」

ここで簡単に説明するには、モナコでの状況は複雑すぎる。答えられる範囲で、正直に答えたつもりだったけれど、富田は納得していない顔で、そうですか、とだけ呟くと黙ってしまった。

エレベーターがきて扉が開いても、富田は動こうとしない。ドアが閉まっていくのを横目で見ながら、私は言葉を繋いだ。

「言った方が良かったなら、申し訳なかったわ。大したことじゃないと思ったの。私たちが初対面じゃないことなんて、あなたと小川さんの間には関係ないことじゃない?」

「関係なくないんです。親太郎さんにとって、神崎さんは特別な人で」

―とくべつ、って…。

「…全く意味が分からないけど、どういうことかな?」

「私たちが別れることになった原因は、神崎さんです」

ますます理解ができない。

質問する言葉を探しているうちに、遠くからざわめきが聞こえ、それが近づいてくる。これ以上、ここで話すのはまずい。私は富田に提案した。

「富田さん、今夜仕事が終わったら、飲みながらでもゆっくり話さない?色々誤解もあるような気もするし、私もきちんと理解したい」

富田が小さく頷いたことにホッとして、エレベーターのボタンをもう一度押す。その時、スーツのポケットに入れていた携帯が震えた。

父からの着信だった。

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