—女は、愛されて結婚するほうが幸せ。
その言葉を信じて、愛することよりも愛されることに価値を見出し、結婚を決める女性は数多くいるだろう。
めぐみも、夫からの熱烈なアプローチを受けて結婚を決めた女のひとりだ。
だけど、男女の愛に「絶対」なんて存在しないのだ。
“亭主元気で留守が良い”を豪語し、家庭は二の次、好き放題やってきた美人妻・めぐみ。ところがひょんなことから、夫の様子がおかしいことに気づく。
夫を大切にすることを完全に忘れてしまった妻の行く末は…?
“19時半に東京駅到着の予定。家、ご飯ある?”
18時。シューズクロークで靴選びをしていためぐみは、夫・弘樹からのLINEを見るなり小さな声をあげた。
「えっ、帰ってくるの…!?」
−っていうか、どこに出張行ってたんだっけ…。
今日はこれから、メガバンク時代の仲良し同期・千春と樹里と『モルソー』でディナーの予定。
化粧を終え、おろしたてのBCBG MAXAZRIAのワンピースに着替えて、香水もワンプッシュしたばかり。靴が決まり次第家を出る、そんなタイミングだった。
−はあ、最悪。今からご飯なんか作れるわけないでしょ!
めぐみは、弘樹の間の悪さに苛立ちながら、急いで返信を打つ。
“今晩は、研修時代の同期とディナーなの。なにか適当に食べてもらえる?”
すると、すぐに “分かった”とだけ返信があった。
明らかに機嫌を損ねているが、子どもじゃあるまいし、いちいち“ご飯ある?”なんて聞かないでほしい。コンビニで買うなり、Uber Eatsでも頼めばいいではないか。
私はあなたの家政婦じゃない。そんな文句の一つでも言ってやりたいところだが、今は夫の不機嫌にかまっている暇もない。LINEを閉じて、タクシーに飛び乗った。
この記事へのコメント
愛想つかされると、まず浮気疑うよね。
なんで、自分の態度が相手に影響を与えるって思えないのか、本当に不思議。
しかも自分から文句を言ったりすることはなく、とにかく態度だけが変わっていって、そこから持ち直すまでにけっこう苦戦しました。
主人公は取り返しつかなくなる前に気づくといいですが。