200億の女 Vol.5

「彼といると、自分がコントロールできない」。2人の女を翻弄する、男の巧みな話術とは

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

200億を賭けて、男と女の欲望がむき出しになるマネーゲームはやがて、日本有数の大企業を揺るがす、大スキャンダルへと発展していく。

詐欺師の男が最初の駒に選んだのは、令嬢の部下だった。そして男の計画通り…部下は自分でも気がつかぬうちに、令嬢を追い詰めはじめた。


「親太郎さんといると…私、すごく嫌な女になっちゃうんです」

泣いてしまったことへの照れ隠しなのか、富田は涙声のまま笑ったけれど、またうつむき、黙り込んでしまった。

私は、彼女に気づかれぬように、チラリと腕時計を見る。この部屋に入ってくるなり泣き出してしまった彼女を座らせ、話を聞くと伝えたは良いものの、次の打ち合わせまであと15分しかない。それまでに彼女を落ち着かせなければ。

「…何があったの?」

私の質問に、うつむいたままの富田が、小さな、吐き出すような声を出した。

「彼、女の人からの連絡がたえなくて。私の前でも平気で女性からの電話に出ちゃうんですけど、それが下の名前で呼ぶような間柄の子たちで。彼の会社の前で待ち合わせしてた時も、女の人が彼の腕を掴んで出てきて。しかも彼が、女性の頭を優しく撫でたりするのも見ちゃって、もう…」

ーなんだ、そんなこと?

もっと重大な告白をされると思っていた私は、正直拍子抜けしてしまった。これなら打ち合わせに間に合いそうだと安心し、急いた気持ちで思ったままを伝える。

「でもあなたの前で堂々と電話するってことは、その女性たちとの関係がやましいものじゃないからでしょう?それに彼、コロンビアのロースクールを出てるんだし、ファーストネームで相手を呼ぶのも、頭を撫でるコミュニケーションも学生時代の名残りじゃ…」

ないかしら、と結ぼうとしたタイミングで、赤い目をした富田が不思議そうに、あれ?と首を傾げて続けた。

「神崎さんも…親太郎さんが、コロンビアのロースクールにいたこと、ご存知なんでしたっけ?」

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