はじめは、こんなにお受験にのめり込むつもりじゃなかったのに…。
真美さんとご主人は、夫婦とも小学校まで公立で中学受験組だったため、子供ができるまではお受験と一切無縁だった。
「初めのキッカケは、娘が2歳になる前くらいの頃に、義母から『小学校はどこにするの?』と聞かれたことです。そして『女の子だったら、私立の小学校くらい入れておきなさい』とキッパリ言われました。
そこまで強く言われると、その方がいいのかな?と思うようになって。そして義母に勧められるままに、小学校受験の準備を開始することになったんです」
真美さんは、娘を小学校受験に強いと言われる幼稚園に入れることになった。そのためにまず、幼稚園受験用の塾に通い始めたのだ。つまり真美さんの娘は、2歳の時から塾に通っていたことになる。
早くから塾に入っていた理由には、小学校受験に向けての“塾での席確保”という意味合いもあった。
小学校受験用の有名塾は、年長からいざ入ろうなどと吞気に構えていると、既に席がいっぱいで入れない。だから年少のときから、もっと言えば真美さんのように幼稚園に入る前から“席確保”のために会員になっておく必要があるのだという。
それでも初めの頃は、義母が言うから記念受験、程度の軽い気持ちでいたというが…。
「実際に幼稚園や塾に入ると、そこで出会ったママ友たちは小学校受験に夢中になっていました。そして彼女たちの影響を受けて、私も段々と受験にのめり込んでいったんです」
幼稚園に入園した後からは、いよいよ塾での小学校受験に向けての講座が少しずつ始まっていった。
「塾や講座にもよりますが、申し込みなんてコンサートのチケット状態。例えば、水曜11時から申し込みがスタートする場合、パソコンの前で待機し、11時になった瞬間に申し込まないと、人気講座は5分で満席になってしまいます。
そんな人気講座を取れたときの達成感はすごかったですね、志望校に合格したわけではないのに(笑)」
決して高すぎる出費ではないと、信じていた
こうして通っていた娘の塾代は、年少からの3年間で、トータル500万を超えていた。
その内訳は、年少・年中の時は月謝が毎月約7~8万円、年長になると毎月約20万円ほど。その他、入会金や模試、講習会などで加算されていく。
真美さんのような一般家庭にとっては、毎月の塾代は大きな負担となったはずだ。だが、それでも当時は「高すぎる」とか「大変」だとは決して思わなかったという。
「まず、都内で有名私立小学校を目指す人たちの間では、500万円は特別に高額だという認識はなく、あくまで常識的な範囲。そんな世界に身を置いていると、次第に錯覚に陥っていくんです。
合格したら、有名大学までの道が約束されている。だから子供に成功への道が保証されているんだって。
不思議ですね…、お金の価値って。それで子供が幸せになるなら安いと感じるんです。むしろ自分のことだったらもっと冷静かもしれません。自分の能力をある程度自分でわかっていますから、そんな大きな投資はできません。
だけど子供のこととなると、別。親って子供の能力をどこまでも信じているんですよ。うちの子は、天才だって」
塾通いが本格化した年長になると、真美さんはますます泥沼にはまっていった。
「第一志望は慶應幼稚舎でした。なんだかんだいってお受験の最高峰ですからね。幼稚舎で求められているのは“集団の中できらりと光る子”だと言われています。
そうなると気になってくるのが、自分の子供の出来。倍率は10倍以上なので、お教室でもトップレベルじゃないと無理ですから、ついつい周りの子と比べてしまうようになりました。そうすると、絶対に他の子には負けたくないという競争心で頭が一杯になって…」
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