12星座の女たち Vol.12

「自分から、連絡できない」空気を読み過ぎる魚座女が“結婚願望のない男”を変えたキッカケ

「まだ喧嘩中なの?」

結局、何の予定もない金曜日に耐えられず、恵梨香は友人の綾子『銀座 ル・コチア』に呼び出したのだ。

快く誘いに乗ってくれた綾子に感謝していた。しかし、恋愛の話になると大きく目を見開きダメ出しするので、苦笑いを浮かべながら曖昧な返事になってしまう。

「喧嘩っていうほどじゃ。ちょっと距離が必要かなって…」

建築デザイン会社を経営している男・近藤壮太とは付き合ってもう2年になる。海外との取引も多く、国際的に活躍する姿にはいつも刺激を受けていた。

マンネリとは無縁の理想的な付き合いに、文句の付け所は何一つない。デートだっていつも完璧だ。

2人のお気に入りの店で食事をした後は、必ずと言っていいほど、タクシーを拾ってからお台場へと向かう。

さらさらと足元を滑り落ちる砂の感触に酔いしれながら歩く台場のビーチは、とてもロマンチックだ。

とにかく彼と過ごす時間は、最高で、そして完璧。恵梨香は心底満たされる。当然のように恵梨香は次のステップである”結婚”を望んでいたのだが。


しかし、なかなか二人の関係は進展しない。

もともと、壮太は多忙な男だ。自分が好きなことを仕事にしているせいか、何においても仕事が一番大事なのだろう。

電話一本で、甘い二人の週末がぶち壊されたことも少なくない。

こまめに連絡してくれる時もあれば、数週間放置されることもある。デートの約束はいつも一か月以上先の日付を提示され、まるで予約の取れないレストラン状態だ。

そんな現状に不満があったわけではなかったのだが、ふと不安になった恵梨香は、前回のデートで「私とのこと、真剣に考えてくれてるの?」と、口走ってしまったのだ。

あの瞬間、彼は心底困ったような顔をしていた。

「それは確かにダイレクトすぎるわね…、言いたくなる気持ちもわかるけど。素直に“寂しい”って言えばよかったのに」

鋭い視線で恵梨香を捉え、一番触れられたくないところを突かれる。

「う、うん…。それ以来、なんだか連絡とりづらくなっちゃって」

これ以上しつこく壮太を追及してしまえば、結婚はますます遠のきそうだ。

―それに、この年で捨てられたくない…

あからさまに落ち込む恵梨香を見かねたのか、綾子はワインのお代わりをオーダーする。

そして、こんなアドバイスをくれたのだ。

「恵梨香がそうやって悩むのも分かるわ。私も今の彼氏と上手くいくまでいろいろ悩んだから」

そう言うと、最近付き合ったという庄司との関係について教えてくれた。

彼とは長くイノセントな関係が続いていたらしい。業を煮やした綾子は、ついに自分から「付き合ってみませんか?」と告白したのだ。

「すごいね…、でも私には無理だよ」

それが恵梨香の素直な感想だった。

目の前にいる彼女は自信に満ち溢れ、そして美しい。綾子のようになれたらと思ったことは一度や二度ではない。

綾子は自分を慰めようとしてそんな話をしたのかもしれないが、今こうしてグズグズと足踏みしているだけの状況にいる恵梨香にとっては、自分が余計に惨めに思えた。

深いため息をつくと、綾子はさらに言葉をつづけた。

「少しもすごくないのよ?だって、今の恵梨香って、少し前の私を見てるみたいなんだもの…」

そう言って意味深に微笑む綾子は、ある占いを見せてくれたのだった。

【12星座の女たち】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo