12星座の女たち Vol.9

「つまらない男は、嫌い」恋に刺激を求めて苦労する射手座女を救った、意外な存在

「そんな男、別れて正解よ。ほかにもいい人はいるわ」

友人の真矢は、そう言い切った。無神経にも思える言葉にカチンときたものの、確かに一理ある。大学の同期でもある彼女は、本音で語り合える数少ない紗耶香の友達だ。

紗耶香は、『ダ・ミケーレ』のマルゲリータが目の前で冷めていくのを見つめながら、彼と過ごした日々を思い出す。

康太は控えめに言っても「いい彼氏」ではなかった。遅刻やドタキャンは当たり前だし、酷い時には連絡さえ途絶えてしまう。

だからLINEは、紗耶香から送るのがほとんどだった。それも「おはよう」と「おやすみ」の四文字だけの言葉を延々と繰り返すだけ。

彼を束縛しようという気など少しもなかったのだが、最近は2週間以上も連絡が途絶え、もう限界だと悟ったのだった。

「せめて、私が別れたいって言った時に、もう少し抵抗して欲しかったわ…。」

がっくりと肩を落として、彼と別れた日を思い出す。康太は表情一つ変えずに、別れの通告をさらりと承諾したのだった。

「紗耶香って、いつもそういう変な男ばっかり好きになるわよね」


「確か、前に付き合ってた広告代理店の男もよくわからないサイドビジネスにハマってたし、その前だってプロの夢を諦めたピアニストで、紗耶香が全部奢ってたフリーターだったでしょう?」

真矢は呆れたように「いいかげん目を覚ましなさい」と、付け加える。

紗耶香の恋愛は、いつも「ひと癖ある男」に恋してしまう事から全てが狂い始めてしまう。

普通の男には愛想笑いを向けるだけでも精いっぱいだが、なぜか個性的な男にだけは、素の自分をさらけ出せるのだ。

刺激的な会話や、突飛な思考、思いもよらない行動に惹かれて恋に落ちる。しかし、気が付けばそんな男たちに振り回され、自分でも信じられないほど消耗しているのだ。

今回もそうだ。

寡黙で何を考えているのか分からない康太に惹かれ、紗耶香の猛アプローチで恋人になった。思えばそこが恋愛のピークだったのかもしれない。

些細なことで一喜一憂し、最終的には真矢に「幸せってなんだっけ?」と、問うのが定石だ。

「真矢の言う通りよ。康太も、結局いつものパターンだったわ。」

そう言って落ち込む紗耶香を見かねたのか、真矢は手早くワインのお代わりをオーダーする。

「ねえ、紗耶香。ちょっと面白い話があるの」

そして真矢は、ワインが到着すると意味深に微笑みながらスマホを取り出し、話題を変えた。

差し出された画面には、射手座の6月の運勢が書かれていたのだった。

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