SPECIAL TALK Vol.56

~制約がバネに、逆境が燃料になるということを、自分の人生を通じて証明したい。~

逆境は努力によって、反転させられると伝えたい

金丸:高校はどちらに?

前田:都立深川高校です。普通科でしたが、ほとんどの授業が英語で行われるカリキュラムがあり、魅力的だったので。

金丸:ではその頃には、勉強も得意になっていたのですね。スポーツはどうでしたか?

前田:中学、高校とバスケット部に入りました。ただ、僕は集中すると、ほかのものが見えなくなるくらいのめり込んでしまう性格です。練習のし過ぎで膝を悪くして、高校2年生になるタイミングでバスケ部を辞めて、代わりに、英語のディベートを始めました。

金丸:前田さんのことですから、ディベートにものめり込んだのでは?

前田:学校代表として大会に出場しました。それも、帰国子女が参加するような大会に。

金丸:相当熱心に取り組まれたんですね。

前田:留学したくてもいろいろな事情から僕はできなかったので、そのぶん熱意が高まったんだと思います。商社勤めの家に生まれた子は、親の仕事の都合で海外に行って、自然と英語を身につけることもできるかもしれない。一方、僕は、そもそも海外に渡ることさえできない。だから、本人の努力ではなく、生まれた場所や環境で身につけられるスキルが決まるのは許せないという思いがすごくあって。

金丸:子どもは親も生まれる場所も選べません。そういういろいろな制約から子どもたちを解放するのは、本来、国がやるべき仕事です。

前田:まさに。以前から児童養護施設を訪問することが多いのですが、いずれは彼ら、彼女らを励ますために、自分でもそういった施設を作りたいなと考えています。それは、「逆境の価値」を自ら伝えたいからです。改めて自分の子ども時代を思い返してみると、何らかの制約下に生まれたほうが、むしろそれをバネにできると思っています。マイナス100の制約があっても、努力次第でプラスマイナスゼロどころか、符号を反転させて、プラス100にすることも可能だと。

金丸:様々な制約のなかで努力すれば、それが筋肉になり、知力になり、根性になっていく。前田さんは符号を反転させた代表格ですね。

前田:僕にとって頑張るモチベーションは2つあります。ひとつは、片親だったり、貧乏だったり、あるいは障害があるとか、いろいろな制約下にある人たちに、それを伝えたいということ。この逆境をある種の養分にして、どこまで高みに登れるのかを僕が挑戦し続ける。それによって、少なからず勇気づけられる人がいるはずだと信じています。

金丸:大事に手入れされた花と、厳しい環境に咲く花とでは、目にしたときの印象が違います。人工的に群生している花はすごくきれいで、全体のデザインもしっかりしています。でも私はそれよりも、崖の岩の間から出ている一輪の花のほうが好きですね。意識しないと見つけられないし、ほかに代えがたい価値を感じます。

前田:僕も、崖に咲く一輪の花のほうが好きですね。

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