気づけば、丸2年彼氏がいない
「若く結婚しただけで勝ち組気分でいる彼女たちの鼻を明かしたくて必死でした。だって、年を重ねて自分の魅力が上がった実感は確かにありましたから」
実際、年齢を重ねるにつれ、美香は20代の頃よりも多くの男性と出会うようになった。
「男性も30歳を超えてくると、身元がきちんとした女性との出会いを求めるんじゃないでしょうか。仕事の繋がりがデートに発展したり、友人からの紹介も増えましたね。独身の女同士の絆は深まるので、食事会の誘いも多かったです」
また、若い頃のようにただチヤホヤと可愛がられるのではなく、自分が人として成長したことで対等に話ができる。
年を重ねて洗練された女を、男性は丁重に扱ったという。
誘われるレストランのレベルも上がったし、ワインの味にも詳しくなった。“大人のデート”は格段に楽しい。
「だがら、その気になればすぐに結婚できると思っていました。最近は人気女優も30歳超えてることが多いし、焦りはなかったです」
しかし美香は、徐々に違和感に気づき始めたのだという。
「デートに誘われる、イイ女だねって褒められる。好きだとも言われるし...部屋にも誘われます。でも、“付き合おう”とは言われなくなったんです」
いつの間にか“選ばれる女”ではなくなっていた
「あれ、と気づいたときにはもう遅かった。感覚としては“モテ”てるはずなのに、丸2年も彼氏がいなかったんです」
しかしもちろん、男性と交流がなかった訳ではない。
定期的に食事に行き、お互いの家を行き来する関係はある。でも、やはり“彼氏”ではなかった。
「“この関係、どうなんだろう...”と多少の不安がよぎっても、強がって見て見ぬ振りをしてしまうんです」
大人になるにつれ、“そういう関係”になるとき、相手に付き合う云々を確認するのが野暮に思え曖昧にするようになった。
イイ歳をして重い女にはなりたくない。しかし相応の重みを感じさせなければ、男が責任を負うことはない。
「結局、男性が選んだ結婚相手のほとんどは“結婚したい”って願望を素直に表に出せる若い女性ですよね。男ウケする服を着て、甘えるのも尽くすのも上手。我儘も涙も上手に使う。私はプライドばかり成長して、強がりすぎました」
そうして“物分かりの良さ”が仇となり、美香は“選ばれる女”ではなくなっていた。
素直さを失うことこそが、本当の意味で“年を取る”ということかも知れない。
「それに、私は仕事もきちんとして充実してるって自負があったんですが、今更ながら“エリア総合職”っていう立場にすごくモヤモヤしてきて…」
美香はさらに投げやりに言い放つ。
エリア総合職とは、転勤がない代わりに、通常の総合職より給与が低い勤務スタイルである。
「転勤がないなら給与は低くて当然と思われるかも知れません。でも、出産子育てを視野に入れて長く働きたいと考えたら仕方ないじゃないですか。けど実際、エリア総合職はほとんど女性しかいないんです。一見、“女性のため”と持てはやしながら、昇給や昇進を阻むシステムですよね」
美香は大きくため息をつき、そして最後に遠い目でこうつぶやいた。
「仕事も婚活も中途半端なまま、今年はもう35歳になります。今はもう、こんな私を受け入れてくれる人なら誰でもいいと思ってます......」
俯いた美香は語気を強くし、最後にこう言い放った。
「男性と同じくらい活躍すべきと言われながら、同等の評価は得られない。年を重ねた女は美しいと賞賛されながら、選ばれるのは結局若い女。それが、現実なんです」
誰もが“こうあるべき”と美しい理想を唱える中、当の本人に現実を指摘する声は少ない。
この矛盾の中で、人生の選択を見誤り、もがき、失望する女性は多いのかも知れない。
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