SPECIAL TALK Vol.51

~自分たちの力で業界を変えたい、そんな思いで医療の世界へ飛び込んだ~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。経済同友会副代表幹事、NIRA代表理事を務める。

巨大企業も狙う業界で、チャンスをものにできるか

金丸:坂野さんは経営を始めて何年目ですか?

坂野:大学卒業からなので、もう18年目です。

金丸:学生さんたちに、在学中や卒業後すぐの起業をおすすめされますか?

坂野:まったくできません(笑)。一度は社会人を経験したほうがいいですよ。

金丸:でもグーグルもマイクロソフトも、社会人経験のない人たちが創業しています。

坂野:そういう生粋の天才はいいかもしれないけど、自分が間違いなく天才だという自信がない限りは、やめたほうがいいと思います。

金丸:こんなに成功している坂野さんに言われても、あまり説得力がないような。

坂野:いやいや。優れた技術をもっているとしても、社会での経験がなければ、それをどうやって実社会の課題解決に生かせばいいのかわかりません。結局、遠回りするように思えます。

金丸:なるほど。そういう私も11年間の会社勤めのあと起業したのですが、坂野さんはたとえ就職したとしても、きっと飛び出していたでしょうね。非常に優秀な人でも一度大企業に勤めてしまうと、大半の人がそこに安住してしまって、潜在能力を眠らせたままにしてしまいます。

坂野:確かに私もそれは見てきました。天才にしか思えなかった大学時代の友人たちが、企業のなかでまったく力を発揮できないままでいる。

金丸:大企業というのは、柵に囲われた牧場のようなものです。そんな環境で、天才が若いうちから潜在能力を生かせる仕事に出合えるわけがありません。

坂野:本当にもったいないですよね。

金丸:学生からいきなり起業して、たとえ失敗したとしても、そこから学んで大企業に入るのもいいし、大企業で勤めてから起業してもいい。どちらにせよ、最新技術を学べる仕事に就くことができれば、その後の活躍の場は格段に広がります。

坂野:金丸さんは、日本からグーグルやマイクロソフトのようなベンチャーは出てくると思いますか?

金丸:たとえば20歳の若者が作ったものを見て、「これは優れているから買おう」という意思決定が日本の大企業にもできれば、出てくると思いますが、今のところそういう発想はないでしょうね。

坂野:確かに。

金丸:ただ、私の経験では、15年に一度くらいの頻度で大きなチャンスが現れます。そのチャンスを掴めるのは、賢い人ではなく、たまたま大きな変化の近くにいて敏感に反応した人。ビル・ゲイツだって、誰よりも優れたプログラマーだったわけじゃありません。

坂野:その捉え方は面白いですね。

金丸:チャンスというのは、15年に一度、15分しか開かない扉のようなものです。天才であろうとなかろうと、その15分の間に部屋に入るかどうか。ドアが閉まったら、部屋に入った限られた者同士で競争が始まる。あとから部屋に入ろうとしても、決してドアは開きません。

坂野:そういう意味で、医療業界はまさに今、ドアが開いているタイミングだと思います。これまで病院のデータは門外不出でしたが、病院そのものがようやくIT化に乗り出し、病院同士がネットワークでつながり始めています。

金丸:もともと規制の強い業界なので、入ってくるプレイヤーは少ない。明らかにチャンスですよね。

坂野:フェイスブック、グーグル、マイクロソフト、アップルといったアメリカのガリバーもみんなヘルスケアを狙っていますが、まだ誰も成功していません。でもいつかは趨勢が決まる。私も今、たまたま扉の近くにいるので、これを神様が与えてくれたチャンスだと思って、ある意味、覚悟を決めています。いろいろな方のご協力があってここまで来られましたから、今後もリスクをリスクと思わず挑戦を続けたいです。

金丸:坂野さんのように、大きなチャンスを見逃さない若者がこれからもどんどん出てきてくれると、日本はきっと変わるでしょう。今日は本当にありがとうございました。

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