デスパレートな2人 Vol.8

恋人との同棲中、平然と“昼帰り”した男。28歳のキャリア女が最低男に強く執着する理由とは

―社内恋愛―

会社員なら誰しもが一度は経験するであろう、秘密の恋。

毎日会えて、仕事のことも分かりあえる。もしかしたら普通の恋より、濃密な関係が築けるのかもしれない。

しかし…。

時にその濃密過ぎる関係が、残酷にも2人を切り裂くきっかけにもなりうる。

これは、ある会社で起こったリアルな“社内恋愛の悲哀”であるー。

同じIT企業で勤務する、総務部の吉田結衣(28)と営業部のエース・斎藤健(32)。

結衣は健に告白され、交際がスタート。付き合って1ヶ月してすぐ、効率的に会うためにと同棲をはじめる。

一方会社では、株主総会で会長が修正動議を起こし、新社長として就任。そしてこれが2人の間の溝を深めるキッカケとなる。旧社長・松島派の結衣と、新社長・野村の右腕になると豪語する健は、家でもギクシャクした雰囲気になってしまうのだった。

そんな中、結衣はこの状況を何とか打開しようと同僚の奈央に相談し、イチからやり直したいと決意したが…


結衣がうっすらと目を開けると、まだ部屋は薄暗かった。時刻は5時を過ぎたところである。

―……健は!?

どうやら健を待ちながら寝てしまっていたようだ。慌てて寝室や玄関を見るが、健の姿はなく、帰宅した痕跡もない。

これまでも、金曜日は朝まで飲んで帰ることがたびたびあった。

「いつも通りのことよ」と言い聞かせて大きく深呼吸し、不安な気持ちに蓋をする。だが寝室で眠る気にはなれず、健の帰りがすぐに分かるようソファに横になった。

“うまくいかないことばかりに目を向けるのではなく、大事にしたいことや気持ちを丁寧に守り育てていこう”

昨夜の奈央との話でそう思ったばかりなのに、目を閉じると帰って来ない健への不安や寂しさでいっぱいになる自分の心の弱さが、嫌になる。

外が明るくなっても一向に眠りにつけず、居てもたってもいられなくなった結衣は、部屋中のありとあらゆる掃除に取りかかった。

何も考えたくない。
だからとにかく掃除に集中した。

部屋中の目についた物を無心で洗濯機に入れる。気づけば3回も洗濯機を回していた。ベランダにたくさん干された洗濯物をぼんやりと見つめながら、健の帰りを待つ。

そしてどのくらいの時間が経っただろうか。ガチャリと玄関の開く音と共に、健がとうとう帰ってきた。「ただいま」と言うと少し気まずそうに、結衣の顔をちらりと見る。

「…おかえり。どこかで酔いつぶれてないか心配したわ」

結衣は、努めて明るい声を出す。健がこの家にいたくないと思わないように。今夜はちゃんと話し合えるように。

だが健は、結衣が一生懸命保とうとした平穏な心を、いとも簡単に壊すのであった。

【デスパレートな2人】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo