デスパレートな2人 Vol.1

デスパレートな2人:「3回のデート無駄じゃない?」憧れのやり手営業マンとの幸せな恋に、忍び寄る暗雲

―社内恋愛―

会社員なら誰しもが一度は経験するであろう、秘密の恋。

毎日会えて、仕事のことも分かりあえる。もしかしたら普通の恋より、濃密な関係が築けるのかもしれない。

しかし…。

時にその濃密過ぎる関係が、残酷にも2人を切り裂くきっかけにもなりうる。

これは、ある会社で起こったリアルな“社内恋愛の悲哀”であるー。


「吉田さん。…俺と、付き合わない?」

結衣は、営業部のエースである健からの言葉に、喜びを噛みしめた。

これが悲劇の始まりとも知らず―。



金曜日の19時。えびす像の前で、結衣はドキドキしながら健を待っていた。

週末を控えた恵比寿の喧騒にいつもなら辟易してしまうが、この日は違う。楽しみにしていた、健との2人きりでの食事なのである。

「ごめんっ……!!待った?」

健は息を切らしながら、しかしいつもと変わらぬ爽やかな笑顔で近付いてきた。

彼のトレードマークである、綺麗に体にフィットした濃紺のスーツ。恵比寿の人混みの中でも、そのスタイルの良さは抜群に目立っている。

「私も、今来たところなので大丈夫です。」

そう答えながら結衣もとびっきりの笑顔を見せ、2人で店に向かった。



結衣がいまのIT企業に転職したのは、ちょうど一年前のこと。

新卒で入社した会社は、大手メーカーだった。ネームバリューと安定で選んだその会社は、年功序列と男尊女卑が蔓延っていた。

「上の言うことは絶対」という体育会系の企業体質、飲み会での数々のセクハラ発言。また、何かと難癖をつけてくるお局さまの顔色を伺う日々。

こんな環境に負けてたまるかと、最初の数年は頑張った。

しかしいくら正しいことをしようとしても、「若いから」「女だから」「言われたとおりにやればいい」そんな理由でねじ伏せられる日々が続いた。

―こんな窮屈な会社に、貴重な20代を費やすなんて…。

社会人としてある程度のスキルと経験を積んだ27歳の時、結衣はいまの会社へ転職した。前の会社より規模はずいぶんと小さいが、勢いのあるIT企業である。

白を基調としたスタイリッシュなオフィスには「結果が全て」という文化が浸透しており、向上心が強い人たちがイキイキと働き、毎日が刺激に溢れていた。

そして結衣はここで、健と出会ったのである。

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