崖っぷち妊活物語 Vol.10

モテ女が、モテ女たる所以。キャリア女の嫉妬を蹴散らした“ゆるふわ女”の衝撃の一言

―私、もしかして不妊...?ー

結婚相談所に助けられながら、気が遠くなるほど壮絶な婚活を経て、晴れて結婚ゴールインを果たした女・杏子。

一風変わったファットで温和な夫・松本タケシ(マツタケ)と平和な結婚生活を送り、はや2年。

34歳になった彼女は、キャリアも美貌もさらに磨きがかかり、順風満帆な人生を歩む一方、心の隅に不妊の不安を抱えていた。

藤木というスパルタ婦人科医の診察に憤慨し、患者をVIP待遇する病院に転院した杏子。

女子会マウンティングにもめげずに治療に励むが成果は出ず、藤木の元に舞い戻り、とうとう社内に治療についてカミングアウトした。


「きょ、杏子さん...。今日は、会社は休んだ方が良かったんじゃないですか...?」

午後出勤で会社に現れた杏子の姿を見て、後輩の奈美はギョッと目を剥いた。

だが、それも仕方がない。

とうとう体外受精を決意し、午前中に藤木の元で“恐怖の採卵”を終えたばかりの杏子の顔は青白く、また下腹部にわずかに残る痛みが気になり、老婆のように腰を折り曲げて歩いているのだ。

「だ、大丈夫...、特に問題ないから...」

杏子はまだクラクラする頭を抱えながら返事をした。たしかに、今日くらい会社は休んでも良かったかもしれない。

だが、杏子はこれまで有休以外の休みを取ったことがほとんどないのだ。

激務だったジュニア時代は、風邪をひこうが高熱を出そうが出社する以外に選択肢がなかったし、むしろ一度でも休んでしまえば、心に甘えが生じて“休み癖”がついてしまうのが恐かった。

そんな社会人生活を10年以上も送っていたら、病院通いの許可は取ったとはいえ、多少無理をしても日頃の癖で会社にきてしまうのだ。

「そ、そうですか...。無理しないでくださいね。何かあったら、気軽に言ってください...」

チームの後輩である奈美には、杏子の事情は伝えていた。

それ以来、彼女はまるで腫れ物に触るかのように杏子に接したが、それをフォローする余裕は、少なくとも今はなかった。

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