崖っぷち妊活物語 Vol.9

「他人に“弱味”を見せるのは負け」。プライドの高い外銀美女が、初めて会社で涙を見せた理由

―私、もしかして不妊...?ー

結婚相談所に助けられながら、気が遠くなるほど壮絶な婚活を経て、晴れて結婚ゴールインを果たした女・杏子。

一風変わったファットで温和な夫・松本タケシ(マツタケ)と平和な結婚生活を送り、はや2年。

34歳になった彼女は、キャリアも美貌もさらに磨きがかかり、順風満帆な人生を歩む一方、心の隅に不妊の不安を抱えていた。

藤木というスパルタ婦人科医の診察に憤慨し、患者をVIP待遇する病院に転院した杏子。

女子会マウンティングにもめげずに治療に励むが成果は出ず、藤木の元に舞い戻る。だが「本当に子どもが欲しいのか」という迷いが生じ、母となった由香と再会するが...?


「何でも話してって、前にも言ったじゃない」

『オークドア』のテラス席に腰掛けた由香に穏やかな視線を向けられると、杏子は不思議と身体の力が抜けていくような感覚があった。

最近は“子ども”の姿を見るのもツラい時期もあったはずなのに、赤ん坊連れの由香の姿は、杏子のギスギスしたプライドすら溶かしてしまうほどの圧倒的な神々しさがあったのだ。

これまで、子作りに苦労していることを夫と医者以外に話したことは一度もない。だが杏子はこの時、何もかも打ち明けてしまいたい気持ちに駆られていた。

「あの...」

すると、赤ん坊が「フニ...」と小さな泣き声を発し、由香の視線が逸れた。

愛おしそうに赤ん坊を見つめながらベビーカーを優しく揺らす彼女を前にすると、ただ素直に“羨ましい”という感情が湧く。

「もしかして、もう噂が広まってるのかな」

母と子の姿に思わず見惚れていると、由香が悪戯っぽく微笑む。

「え、噂って...」

「私がまた“離婚”するって、誰かから聞いたんでしょ?」

想像もしていなかった由香の発言に、杏子はしばし絶句した。

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