東京マテリアル・ガールズ Vol.13

消えない野心と"小さな不満"が邪魔をする。素朴な幸せに満足できないオンナの末路

女同士の闘いなんて、くだらない?

美貌・財力・センスのすべてを手に入れた女たちが繰り広げる、ヒエラルキー争い。

男からは求められ、女からは妬まれ、そして羨望の的となるカリスマ読者モデルの世界。

己の自己顕示欲を隠すことなく曝け出す彼女たちは、時に結託し、時に競い合う。

くだらない、と思うならどうか覗かないで欲しい。

優雅で美しくも、水面下で死にもの狂いで闘う、女たちの醜い生き様をー。

会計士として働くあおいは、女性ファッション誌『GLORY』の読者モデルとなり、その地位を確立していく。

そして、ライバルの景子がフォロワーを購入している件を告げ口してスタイルブック発売の座を手に入れるが、本の売上げ低迷を気にした読モ仲間の一人が卑劣な行動を起こし、あおいはとうとう読モをクビになってしまった。


「おめでとうございます。」

婚姻届を提出に訪れた宮崎市内の役所でそう言葉をかけられ、あおいは思わず笑顔になる。

嬉しそうっちゃね、と隣で穏やかに微笑むのは黒木祐介だ。

「…嬉しいに決まっとるっちゃね。祐介さん、本当にうちが奥さんで良かった?」

あおいはさも”新妻”風の初々しさを意識し、上目遣いでたった今正式に夫となった男を見つめた。

「なに心配しちょると!」

そう言って、はにかみながらあおいの腰に手を回す、客観的に見ても自分にベタ惚れな夫。

東京で何もかも行き詰まっていた時に、ふっと湧いて出たようなお見合い話で出会ったにしては、祐介は完璧すぎる男であった。

読者モデルを「クビ」になり、度を越した不特定多数からのネット上での中傷で、会計士の仕事すらまともに出来ないほど憔悴仕切っていた最中に母方の親戚が勧めてきた縁談。

東京で暮らすことに拘っていたあおいだが、食事が喉を通らなくなり、知らぬ間に5キロも痩せてしまった時…ふと、故郷で結婚をするのも悪くないかな、と思えたのだ。

祐介は、宮崎を中心に小売業で財をなし拡大を続けている会社の経営者の次男坊。清潔感のある好青年で、一目見た時から良い印象を持った。

東京の一流大学を経て大手監査法人へ就職し、読者モデルとしてスタイルブックまで発売した自分が手にしているのは、あの頃の友人達から見たら「ちっぽけ」なものなのかもしれない。

だが今のあおいは、自分が確かな幸福を感じていると確信している。

左手でその幸福の源泉である男と手を繋ぎながら、右手で何気なくスマホをチェックした。

そして、意外な人物からの連絡が来ていることに気がつく。

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