2017.12.21
SPECIAL TALK Vol.39アスリートや旅と食を組み合わせ、新たな価値を創出
金丸:最近、力を入れている活動は何ですか?
福井:ふたつあります。ひとつは、アスリートを支える食事です。僕が通っているジムのトレーナーがゴルフの女子プロをケアしていたんです。その彼女とランチをした際に「福井さん、私、何食べたらいいですか?」と質問されたのが、きっかけでした。
金丸:そんな質問が? アスリートの方は自分が何を食べるべきかわかっていると思っていました。
福井:僕も驚いたんですが、調べてみると、日本って先進国の中で、いわゆるアスリートフードが最も遅れているんです。日本で食事のサポートを受けている選手は、100人程度の金メダル候補か、1億円以上稼いでいる選手しかいません。
金丸:そんなことじゃ実際に勝負する前に、食で負けてしまいますね。
福井:国も公認スポーツ栄養士を養成していますが、全国に200人程度。それだと全然足りない。公認スポーツ栄養士ほどではなくても、一般の人でもアスリートの食について学べるようにしたいと思い、2010年に「アスリートフードマイスター」という資格を作ったら、メジャーリーグの前田健太選手の奥様である前田早穂さんをはじめ、トップアスリートの奥様たちも次々に受講され、現在では1万人以上の方が資格を生かしています。
金丸:食生活もプロのサポートがあるからこそ、トップアスリートになれたと思っていましたが、実際は違うんですね。
福井:違いますね。いま大注目されている野球の清宮幸太郎選手も、お母様がアスリートフードマイスターの資格を取られたんですが、彼の出身校である早稲田実業学校高等部は、甲子園常連の強豪校では珍しく、寮がない学校なんです。だから野球部では、清宮選手のお母様のお弁当が、お手本になっていたそうですよ。
金丸:運動部って、ちょっと前まで「練習中に水を飲むな」っていう世界だったから、そこに科学的な食へのアプローチが入ったら、ガラリと変わるでしょうね。
福井:もうひとつ力を入れているのは、フードツーリズムです。僕の故郷である京都は、この10年で観光客がずいぶん増えました。しかもリピーターが多い。最初は清水寺や金閣寺などの観光地に行くけれど、何度も来ていると、食べること自体が旅行の目的になっています。
金丸:胃袋をつかんでいるわけですね。
福井:まさに〝Trip for Eat〞です。これは京都に限らず、日本全国で言えることです。各地にその土地ならではの美味しいものがたくさんあるわけだから、情報さえちゃんと伝えることができれば、もっと地方に人を呼べるし、活性化につながるはず。自治体とさらに協力を強めて、そのお手伝いをしていきたいと思っています。
何をやってもいい社会でチャレンジしないのは損
金丸:最後に福井さんから、起業家として若い人たちへメッセージをお願いします。
福井:いまの日本は上の世代の方々が頑張った結果、貧困で死ぬことはありません。こんな状況は、日本という国ができてから初めてのことだと思います。そんな恵まれた環境で、チャレンジしないのは損ですよ。
金丸:人生は一度しかありませんからね。
福井:そう。僕は18歳のときに父から教わった言葉を、いまも大事にしているんです。それは「幸せな人生とは、一生をかけるに足る仕事と出合うこと」という言葉です。当時は大学受験で頭がいっぱいだったから、「何言ってるの、このおやじは!」と思ったんですけど、社会人になり起業したときに、名言だなと思いました。人生は結果じゃない。失敗するかもしれないけど、これが自分の生きる道だと見つけられた人っていうのは、幸せな人生を歩めると思います。若い人たちには、自分の一生をかけられる仕事を見つけてほしい。自分がこの世に生まれてきた意味を考え抜くことで、どんな人生を歩むべきかが見えてくるんじゃないでしょうか。
金丸:そういう意味では、野菜ソムリエは、いろんな人の可能性を広げていると言えますね。
福井 そうですね。多くの女性がこれまで「専業主婦だから」「子どもがいるから」という理由で、いろいろと諦めてきたと思います。でも彼女たちは、僕より炊事も買い物もしているし、食に関しては僕が知らないことをいっぱい知っている。だからこそできることがあるんです。実際に野菜ソムリエで一番有名な方は、10年前まで専業主婦でした。
金丸:自分の可能性を信じて踏み出せば、道は必ず拓けます。若い人に限らず、いろいろな人がチャレンジする社会になってほしいですね。本日はありがとうございました。
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