2017.12.21
SPECIAL TALK Vol.39‶いい子〞だった子ども時代担任の涙が自分を変えるきっかけに
金丸:早速ですが、お生まれはどちらですか?
福井:京都の長岡京市です。ただ、小学生のときにスモッグの公害問題があって、奈良との県境へ引っ越しました。平成の合併で木津川市という市になりましたが、結構な田舎で、実家はいまでもそこです。
金丸:ご両親は何をされていたんでしょう?
福井:父はかまぼこ屋です。母も最初は手伝っていたそうですが、自分で事業をやりたくなって、飲食業を始めました。
金丸:お母様が!?
福井:はい。僕は弟と2人兄弟なんですけど、両親だけじゃなく弟も起業しています。しかも全員分野が違う。
金丸:まさに起業家一家ですね。お母様が起業というのが、また珍しい。
福井:母は新しい物好きなんですよ。祖父がエンジニアで、大戦中は一緒に上海に行ってたらしく、子どもの頃から外の世界を見ていたことが影響しているんじゃないかと。
金丸:お父様はどんな方ですか?
福井:豪放磊落で多趣味。母もいろいろ苦労したと思います(笑)。父はかまぼこ屋を僕に継がせたくて、5歳くらいから毎朝3時に起こされて、市場に連れていかれました。
金丸:幼稚園生で朝の3時起きですか!?
福井:はい、仕入れのために。それが2年ほど続きました。
金丸:夜中にたたき起こされてもちゃんと起きるなんて、素直な子だったんですね。私とは大違いだ(笑)。
福井:子どもの頃は、ずっと〝いい子〞だったんですよ。こうすれば〝いい子〞でいられるとか、大人が僕にどういう行動を望んでるのかっていうのが敏感にわかって。でも疲れるんですよね、ずっと周りの期待に応えていると。〝いい子〞である自分がすごく嫌いでした。
金丸:自分を出せないわけだから疲れますよ。
福井:でも小学校4年生のときに、転機がありました。一緒に遊んでいた友達がけがをしまして、僕がわざとやったものだと先生が勘違いして、パチーンと頬を叩かれたんです。
金丸:それはかわいそうに。
福井:いや、それがよかったんです。50代後半くらいの先生だったんですが、涙まで流しながら僕を叱ってくれた。「ああ、この先生は僕のことを心から思ってくれてる」と感じました。誰からもいい子だと思われたい自分から、この先生を喜ばせたい、そうなりたいと思ったんです。だから先生に喜んでほしくて、授業中にどんどん手をあげるようになりました。それまでは間違ったりわからなかったりするのが嫌で、全然あげなかったんですけど。
金丸:ということは、〝いい子〞なんだけど、ちょっと内向的だった。リスクテイクはしないというような。
福井:そういうことです。だって、リスクを取るような子は、大人からすれば〝いい子〞じゃないですから(笑)。
金丸:それはそうだ(笑)。日本の教育って、減点主義ですからね。
勘と経験に頼っていては父を超えられない
福井:工場や販売店にも連れていかれたし、「社長は最初に出社して最後に帰るべき」とか、「昼ご飯はまず社員が食べてから」とか、いろいろ教え込まれました。
金丸:経営者としての英才教育を受けてきたんですね。それなのに、別の道を選んだ。
福井:父は職人上がりの経営者、要は勘と経験の人なんです。この父を抜くには同じように勘と経験でやってたら一生抜かれへんな、と高校のときに思って。
金丸:違うやり方で勝とうと?
福井:はい。僕は商売を科学しようと考えたんです。当時の練り物業は、おせち用の需要だけで年間の売り上げの何割かを占めていて、12月29日から大晦日までの3日間で、どの商品をどれだけ作るかがすごく重要でした。
金丸:どれくらいの需要があるのか、的確に予測しないといけませんからね。
福井:その通りです。そういう重要な局面でも、父は勘と経験でやるわけですよ。今年は余った、今年は足りなかった、という父を見ながら、もっと何とかできないものかと。それで、大学でマーケティングを学びたくて、経済学部に進みました。
金丸:マーケティングの勉強はどうでしたか?
福井:すごく面白かったです。師事した先生が、店舗の照明に注目されていて、売り場のライティングを変えると、客の心理が変わって売れ行きも変わるという研究をしていました。実際に百貨店の売り場のコンサルティングもやり、のめりこみましたね。
金丸:福井さん自身は、どのような研究を?
福井:卒論のテーマは「女性の社会進出と食文化の変遷」です。女性がどんどん社会進出を始めた頃だったので、女性が可処分所得を多く持つようになったことが、日本の食文化にどういう影響を与えているのか、とくにワインがなぜ日本の食文化に入り込んできたのかを分析しました。
金丸:それは面白そうだ。当時から社会のことに目を向けていたんですね。
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