恋愛中毒 Vol.13

恋愛中毒:無謀な恋を貫いた妻が我に返るとき。警告でなく救いに思えた、冷徹な夫の言葉

人妻が恋するのは、罪なのか。

裕福で安定した生活を手に入れ、良き夫に恵まれ、幸せな妻であるはずだった菜月。

結婚後に出会った彼は、運命の男か、それとも...?

人妻の菜月は、独身の達也と出会い恋に堕ちてしまう。禁断の関係は夫にまで知られてしまうが、二人はめげずに愛を誓う。そして菜月はとうとう離婚を切り出すが、海外赴任を控えた達也態度は曖昧になっていく。


―この時間が、ずっと続けばいいのにー

真夜中の薄暗い部屋のベッドの上で、菜月は達也の肌のぬくもりを噛みしめながら、ただひたすらにそんなことを願う。

家出をして彼の部屋に移ってから数日、二人は不自然なほど静かな日々を過ごしていた。

夫には一応「しばらく実家に戻る」と最初に伝えていたが、彼がそれを簡単に信じるはずはないし、実際に電話の一本でも入れられれば簡単にバレてしまう、浅はかな嘘だった。

一体これから、どんな道を進むのか。

考えれば考えるほど、自分の無謀さは大きな不安として心に重くのしかかり、菜月は目先の快楽に逃げたくなる。

「...どうしたの?眠れないの?」

寝返りを繰り返す菜月の気配を感じたのか、達也は薄目を開け、髪を優しく撫でてくれる。

「うん、目が覚めちゃったの」

一方の達也も、口喧嘩をして以来、離婚やこの先のことついて一度も口にしない。

そんな彼に不信感が募りつつもあったが、未来が不安定なほど、身体の底から執着にも似た愛しさが込み上げた。

「ぐっすり眠れるように、してあげようか?」

このとき二人は、“現実”という魔物がヒタヒタと背後に忍び寄るのを、お互い見て見ぬフリをしていたのかもしれない。

そして、言葉にできない不安と後ろめたさの帳尻を合わせるために、ただ抱き合うしか術がなかった。

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