どんなに飲んでも翌朝は早く起きるのがデキる男
翔吾さんは言った。
「昔は、金曜といえば朝3時頃までクラブやバーで浴びるように酒を飲んで、明け方には締めのラーメンか焼肉を食べに行く。そして鳥の鳴き声と共に帰宅が当たり前だったよ。
それが“金曜夜の正しい過ごし方”だったからな。
でも最近は、明け方に鳴く鳥の声なんて聞いていない。うっすらと藍色に染まる東京の空を見るのは、早起きしているからだ。」
◆
「あ、おはようございます」
翌朝、きっちり時間通りに、潤さんが自宅下まで迎えに来た。
数時間前まで、夜の喧騒の中にいたとは思えないほど溌剌としている。
決して、皆飲まなくなったわけではない。未だに酒も好きだし、女性も好きだ。夜遅くまで遊ぶこともある。
ただ最近、周りのできる経営者陣は揃って皆、“早起き”である。必然的に、泥酔などしない。
365日いつだって、朝に連絡すればすぐに返事は返ってくるし、早朝から行動を開始している。
昼過ぎまでダラダラと寝て過ごす...なんてことは誰もしない。
僕からすると”無駄に元気”とさえ思ってしまう時がある。
何でそんなに、寝ることを嫌うのか?と考える度にこう思うようにしている。きっと、毎日楽しくて刺激的な出来事の連続の中で、1分1秒を逃したくないという思いが強いからだと。
二日酔いで1日を潰すのがいかに無駄なことか、身をもって知っているのだ。
空にしたボトルの数を競い、一晩でハシゴした店の数や使った金額を自慢し合っていた頃もあったはずだ。だが、そんなことを競うのは、2017年の港区ではヤボだということなのだろう。
ただし。もう一度言うが、皆女性は大好きだ。
ただ、無駄に女性へお金を費やすよりも、自分の趣味や、男同士で楽しい時間を過ごすために使うことも有益なのだと気づいたのだ。
「前は、女性と遅くまでデートするのが、最高の週末の過ごし方だと信じて疑っていなかったのに。」
「翔吾さんの後ろには、常に3、4人の女性がゾロゾロとついていたのに。」
「そんな時代もあったねぇ。」
翔吾さんと潤さんの会話をバックシートで聞きながら、車はまだ混雑していない高速道路を走り抜けていった。
週末は、都会にいない。アクティブに動き回る
天候に恵まれ、南房総には良い波が来ていた。
朝から動き回り、楽しんだ後は近所の定食屋へ。運転している人以外はビールで乾杯し、たわいもない話が続く。
「ここのコロッケ、本当にうまいな。」
潤さんの言葉に大きく頷く。1,000円の定食は、疲れた体に心地よい活力を与えてくれた。
「そう言えば、この前久々に『かわむら』に行ったんですけど...」
今日集っているメンバーは、先日上場したばかりの飲食店経営者に、IT業界で知らない者はいない、有名社長が2名。そして翔吾さん、潤さん、僕の計 6名だった。
全員の総資産額を合わせれば、かなりの額になる。
普段は接待などで一人10万以上するような銀座の高級店や、紹介者がいないと入れない一見さんお断りの会員制レストランに、予約8ヶ月待ちの店など、なかなか良い店に行っている。
しかし、高級店で見栄を張るだけでなく1,000円の定食でもそれが美味しければ心から喜ぶ。港区以外でも楽しんでいる。
ー港区民の遊び方が、確実に変わってきてるよな……?
波の音を聞きながら、一人で時代の流れを考えずにはいられなかった。
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