女性もヘルシーに。タクシー代は、渡さない
その翌日、翔吾さんから連絡が入り、久々に食事会に参加することになった。
(とは言っても2対2とかではなく、もっと気軽な、文字どおり“食事をする会”なのだが)。
その食事会に来ていた志保は、物凄く綺麗な人だった。
大きな瞳に小さな顔。小柄ながらも綺麗に手入れされた肌と髪に、清潔感と色っぽさを感じる。
「最近、気になる女性は皆自立して、ヘルシー志向でね。」
翔吾さんも、目を細めながら嬉しそうに見つめている。そう言う自分も、タイプが変わってきた。
数年前まで、モデル体型の細身の女性が好きだったが、最近は健康的に美しい女性に惹かれる。
ガリガリは、好きではない。
「志保ちゃんは、SUPヨガするの?」
元モデルで、現在は自分でネイルサロンを経営しているという志保は、ほどよく日焼けしており、綺麗な歯が印象的だった。
「昔は浴びるようにお酒を飲んで、朝までこの界隈にいたんですけど(笑)すっかり、卒業しちゃいました。」
「いいね、そういうの。」
満足そうな翔吾さんを横目に志保の服装に目をやると、白のノースリーブにスキニージーンズだ。時計はつけておらず、香水もキツくない。
時代は、変わる。
昔のような気合の入ったラップワンピースにピンヒール、そして強い香水なんて女性は、港区おじさんの間では『化石』と呼んでいるのだ。
(もちろんTPOに応じて綺麗なドレスを着こなせることは大前提である)
各々LINEを交換し、お開きの時間となった。
「じゃあ、気をつけて帰ってね。」
「今日はありがとうございました。」
しかしここで、予想に反して翔吾さんは、あっさりと志保を返した。
「タクシー代を渡したりとかはしないんですか?」
港区の定番、タクシー代文化。そんな風潮を嘲笑うかの如く、翔吾さんが微笑む。
「基本的に、タクシー代は渡さない、貰わない。 それが最近の、港区の本当にモテる男女の流儀なんだよ。」
昔はモテるためにタクシー代を渡していたはず。でも今は、タクシー代を渡さない方がモテる?
翔吾さんが、やはり今でも「モテ」に重きを置いていることに安堵しながらも、その方法が短い時間の中で間逆になったことに違和感を覚えずにいられない。
翔吾さんの背中は、ゆっくりと西麻布交差点へと消えていった。
▶NEXT:8月11日 金曜更新予定
Instagramのアカウントは二個持ちが常識。“裏アカコミュニティー”とは?
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
東京カレンダーが運営するレストラン予約サービス「グルカレ」でワンランク上の食体験を。
今、日本橋には話題のレストランの続々出店中。デートにおすすめのレストランはこちら!
日本橋デートにおすすめのレストラン
この記事へのコメント
コメントはまだありません。