チヤホヤされたい東京妻 Vol.6

本当は私、愛されたいの。夫の愛が手に入らず、つい暴走...。チヤホヤされたい妻の言い訳

結婚して妻になった途端、女はオンナでなくなるのだろうかー

かつてはあれほど自分を求めた夫も、結婚後は淡白になり、ただ日々の生活を営むパートナーになった。

外見に気を遣い、綺麗な女であろうとしても、褒めてくれるのは同じ主婦ばかり。

そんな中、自身の市場ニーズを確認するべく、既婚者限定の食事会に参加した遥。

そこで会社経営者の藤田と出会う。初めは相手にしなかった遥だが、マキコ達の勢いに流されて食事をする。自信をつけ、新たな食事会にも積極的に参加する遥。

一方のキャリアウーマン妻、マキコの家庭は...


女は化粧をし、身なりを整えることで、外見を繕うばかりかその心まで自在に操ることが出来る。

マキコは毎日完璧にセットした髪と隙のないメイクで、自分は冷静な強い女だ、と暗示をかけてから出勤するのが習慣だ。

パンプスは必ずフェラガモやイヴ サンローラン。ワードローブはタイトなシルエットで、背筋がしゃんと伸びるような仕立てのものばかりを揃えている。

男と出かける時は「ミステリアスな魔性の女」、女友達と出かける時は「サバサバした姉御肌」を装う。そんな風に着飾ると、心に鎧をかけているように強くなれる。

鎧を纏った自分に慣れていたマキコは、本心を明かす相手が随分長いこといなかった。

だがその夜は、偶然にもすっぴんで寛いでいるマキコのところへ夫・彰が帰宅してしまう。



「あれ、早いね。もう帰ってきたの」

彰は徒歩でも通勤できる距離の外資系投資銀行に勤めている。帰宅は24時を回るのが当たり前なのに、22時という中途半端な時間に帰宅するのは珍しい。

「ご飯食べてきた?何か作ろうか。パスタしかないけど…」

普段から滅多に自炊をしないマキコの家の冷蔵庫には、乾麺や缶詰などしか置いていない。コンビニに走ってもいいのだが、もう化粧を落としてしまった。

「あぁ、パスタならいらない。俺、炭水化物抜いてるって言わなかったっけ。」

夫は面倒くさそうに答える。パスタなら、という言い方にも多少の棘を感じた。こんな時、夫の食生活について常に把握し、冷蔵庫をタンパク質で満たしておかない自分が責められたような気分になる。

自分も1日働いて疲弊しているのに、食事を作ってやると申し出た。なのに、いかにも面倒くさそうに対応されることが許せない。マキコは次第に不機嫌になってしまった。

やってはいけない、と分かっているのについ口から言葉が溢れ出てしまう。

「…...何それ。」

自分でも、棘のある言い方をした自覚はあった。今日は会社で時短勤務中の部下の仕事もカバーして、心身ともに疲弊している。疲れを取ろうと立ち寄った馴染みのスパでも、お気に入りのセラピストが休みで全く癒されなかった。それに、この男は私を愛していない。

ーこの男は私を愛していない。

と、心の中でもう一度呟いた後、マキコは久々に感情のコントロールを失った。

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