目まぐるしく情報がアップデートされる街・東京。
東京で最新トレンドにアンテナを張り巡らし続けるのは、容易ではない。
彼女たちは、銀座の新しいレストランや、旬なファッション、そして美容アイテムを使いこなし、人生を謳歌する。
トレンドに溺れ、トレンドを愛す女を、人は東京トレンド娘と呼ぶ。
そんな彼女のライフスタイルと恋愛模様を、覗いてみよう。
トレンド娘の最優先事項。それは・・・
「もう指輪もらったの?早すぎじゃない?!」
美加が右手の薬指で光る華奢なゴールドの指輪を得意げに見せると、同期の泉が顔を近づけて指輪を凝視してきた。予想通りの反応がきて、美加は嬉しいようなくすぐったい気分を味わった。
「前のと似てない?ほら、小指に着けてるそれと、ほぼ同じじゃん」
前に付き合っていたヒロキから貰った指輪を、リサイズして使い続けているのを知っている泉から、皮肉も込めて言われてしまった。
「あー、やっぱりそう思う?同じ内科医だから嗜好が似てるのかな」
美加も冗談交じりに泉の皮肉に乗っかった。
総合商社で一般職をしている美加と泉は、仕事帰りに恵比寿のビストロでワインを飲みながら近況報告で盛り上がっていた。インスタグラムにアップするための、お肉の写真は既に撮った。あとは話に花を咲かせて思い切り食事を楽しむだけ。
二人で食事に行くと、まずはスマホを取り出して料理やワインの写真を撮る。食事を楽しむため、写真を撮るため、どちらが目的でそうしているのか、その境界は彼女たちにとっては曖昧だ。
だが、そんな事をいちいち気にしてはいない。一度きりの人生を全力で楽しむ事をモットーに、仕事よりもプライベートの充実が何よりも大切。
「日本初上陸」といわれるものと一緒に写真を撮り、それをインスタにあげることが、彼女たちの最優先事項なのだ。
そうして、日々新たに入ってくる東京最新トレンドの波を乗りこなす美加と泉だが、26歳になり恋愛面では落ち着きたいと考えるようになってきた。適齢期だと信じている28歳で結婚するためには、逆算すると既に出会っていなければいけない年齢というワケだ。