SPECIAL TALK Vol.21

~子どもたちが“モノづくりをする環境”をつくることに人生を捧げたい~

プログラミングこそ、現代の基礎教育である

金丸:それが、プログラミング教育ですね。具体的には、どのようなことを目指しているのですか?

石戸:プログラミングを「読み・書き・そろばん」と同じように、基礎的な教養として、学校で子どもたちに学んでほしいんです。私たちの合言葉は、「すべての子どもたちにプログラミングを」。いまだに「なぜプログラミングが必要なのか?」という議論がありますが、私に言わせれば、その議論自体がナンセンス。今の時代、意識していないだけで、テレビもお風呂も冷蔵庫も生活にかかわる大部分が、コンピュータで制御されています。すべての文化活動、経済活動、社会活動がコンピュータに制御されている時代なのに、プログラミングの原理原則を知らなければ、何かトラブルが起きたときに対応できませんよね。そういう意味で、プログラミングは、現代人の基礎教養だと思います。

金丸:同感です。いまだにテクノロジーを新たな「脅威」として敵視するような〝オジサン〞も少なくありませんよね。そういう考えの人たちが、社会の進化や発展の足を引っ張っていると思いませんか?

石戸:どういうわけか教育って、すぐに二項対立になるんですよね。ITが発達して、人工知能(AI)が進化したら、「紙はいらないんですか?」「教師はいらないんですか」っていう。でも、全然いらないわけではないんです。むしろ、ITが可能にするのは、今まで教育が充分に行き届いていなかったところに行き届かせることであり、習ってみたい世界中の先生の授業を受けることもできます。選択肢を最大限に広げ、なおかつ平等に学びの機会を提供できるのが、ITの力なんです。

金丸:プログラミングやソフトウェア教育は、お金がかかるものだと思われていますが、本当はそんなことないんですよ。むしろ、お金をかけずに最大のリターンを得られるもの。その理解がもっと進んでほしいですね。

石戸:本当にそう思います。本来テクノロジーとは、人間の欲望から生まれたもの。だから、「脅威」じゃなくて「希望」なんです。

金丸:AIも一部の人にとっては、雇用を奪う「脅威」とされていますよね。

石戸:かつて産業革命が起きたときも、「人の仕事が機械に取って代わられる」と大騒ぎになり、打ち壊し運動が起きたりしました。でも結果的には、産業は幾何級数的に伸び、人びとの生活は遥かに豊かになりました。だから、テクノロジーは希望なんです。私は生活をより豊かにしてくれるものとして、AIに期待しています。AIによって「65%の職業がなくなる」と言われていますが、それなら65%の新しい仕事を創ればいい。グーグルとかアップルとかフェイスブックとか、20年前にはまったくなかった仕事ですよね。それと同じように、人間にしかできない仕事を新しく創り出せばいいのです。

金丸:たとえば笑いをとる漫才師は、人間にしかできない仕事ですよね。偶然の要素も強いし、その場の雰囲気もあるし。

石戸:そうですよね。ロボットがオリンピックで争っても、そんなに感動はないと思うんですが、生身の人間が、それこそ想定外のハプニングを乗り越えながら競い合う姿を見ていると、心から感動します。漫才師もそうですが、「対ヒト」の接客業は、機械にはまだ難しい。こういう議論がもっと深まっていくといいですね。

金丸:新しい時代に向けて、当社も「AIを最も有効利用する方法を提供する会社」として、頑張っていきたいです。

石戸:ぜひ金丸会長のような方に、魅力を伝えていってもらいたいです。テクノロジーに怯える大人がいる一方で、多くの子どもたちが、ITやAIを希望と捉えてくれているのは嬉しいですね。ITを使えば、自分が思ったことを世界に発信できたり、世界中の人たちとつながったり、アイデアを形にできたりする。自分たちの能力を無限に拡げてくれるものがITであり、上手に使いこなす子どもたちも増えています。日本の未来は明るいと思います。

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