SPECIAL TALK Vol.17

~食料、エネルギー、環境……。すべての問題をミドリムシが解決する~

仕事の後、ミドリムシの研究に明け暮れた銀行員時代

金丸:ここまで起業を決意していたにもかかわらず、なぜ東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に就職したのですか?

出雲:端的に言えば、ミドリムシを培養する技術がなかったからです。在学中から一緒にミドリムシの研究をしている仲間に、鈴木健吾(現ユーグレナ取締役)という者がおり技術の責任者なのですが、その彼から「ミドリムシをうまく培養できるまで、どれだけの時間とお金がかかるかわからない」と言われました。私自身もすぐ起業できるようなお金はありませんでしたし、大学4年のときなんて、どうすれば文科省から研究費を引っ張り出せるかを考えていたぐらいですから。なので、投資してくれる人を探すために銀行に入りました。お金持ちと出会えるだろうと期待して(笑)。

金丸:すごい志望動機ですね(笑)。実際に入ってみて、いかがでしたか?

出雲:想定とまったく違う部署に配属されてしまって……。住宅ローンを担当することになり、望んでいた超富裕層の方との出会いはありませんでした。

金丸:1年後には退職されますが、その頃にはミドリムシの培養問題もクリアしていたのですか?

出雲:いえいえ、まったくです。社会人になっても私の研究熱は高まるばかりで、仕事の後や週末は鈴木と一緒に、ミドリムシ研究に没頭していました。でもなかなかいいアイデアを思いつかず、行き詰まってしまい、思い切って会社を辞めることにしたんです。よく人生において“神様が見ていてくれる”という言葉があるじゃないですか。当時の私はまさに「会社を辞めれば、ミドリムシの神様がきっとアイデアを授けてくれる」と思っていました。

金丸:都合のいい考え方ですね(笑)。

出雲:そうですね。だから、辞めたのにアイデアを思いつかなくて驚きました。その頃は、ひたすらミドリムシを研究している各地の大学教授を訪ね回り、実験を繰り返していました。移動は夜行バスなんですが、結構朝早く現地に着いてしまうので、24時間やっている銭湯で時間を潰していましたね。でもそのときに、アイデアがひらめいたんです。

金丸:どんなアイデア?

出雲:それだけは秘密です(笑)。でもどんなに疲れていても、銭湯に入れば生き返ることができました。

金丸:我々も同じですよ。起業したばかりの頃は徹夜で仕事して、銭湯が開く時間になると行って。そこで蘇って、また仕事に出かけるという毎日でした。

可能性を理解してくれた、堀江貴文という存在

金丸:そんな中、出雲社長は元ライブドアの堀江貴文さんに出会うわけですね。

出雲:大学の先輩ということで、ライブドアの新年会にお邪魔したのがきっかけです。堀江さんと直接お話しする機会があり、ミドリムシについて説明したところ、非常に興味を持ってくれました。当時堀江さんは宇宙事業に情熱をかけていらして、「ミドリムシを宇宙食に活用できたらいいよね」という話になり、「もっと詳しく聞きたいから、今度説明にきてよ」って言われました。そして次の日、堀江さんから電話があり、「いつ説明に来るの? 遅いよ!」と催促されて慌てて出かけましたね。社交辞令とは思っていませんでしたが、まさか翌日に電話をいただけるなんて、本当にスピード感のある方だと思いました。

金丸:彼らしいエピソードですね。

出雲:オフィスを訪ねると、堀江さんはミドリムシについて猛烈に勉強されていて、とにかく大量培養ができれば、さまざまな可能性が広がると。そして「今日からうちのオフィスを自由に使っていい。研究費も出すから」と言ってくれました。それから半年後の2005年8月には会社を設立し、その年の12月に、ようやくミドリムシの大量培養に成功しました。

金丸:成功のポイントは、どこにあったのですか?

出雲:培養液です。ミドリムシは「美味しすぎる」微生物なので、培養の際に他の微生物が入ってくると、すぐに食い尽くされてしまいます。そこで、ミドリムシ以外の生物は侵入できない培養液を作り出すことに成功したのが、突破口になりました。

金丸:長年研究されていますし、喜びもひとしおだったでしょう。そして、その直後に「ライブドア事件」が起きたんですね。

出雲:そうです。その後、堀江さんとは離れることになりますが、逮捕される直前、渦中の堀江さんに会うことができ、新たな出資者として成毛眞さん(元日本マイクロソフト社長)をご紹介いただきました。

金丸:成毛さんですか? やはり投資の意思決定ができる人は、少ししかいませんからね。大勢の人に会うより、意思決定ができる人を見極め、注力することが大切です。

出雲:本当にそう思います。以前にJX日鉱日石エネルギーさんと共同でミドリムシを使ったバイオ燃料の研究開発をしていましたが、最初伺ったときは、あまり乗り気ではなかったんですね。しかし、名誉顧問の渡文明さんと相談役の西尾進路さんが「面白そうじゃないか!」と仰ってくれて、とんとん拍子で話が進みました。

金丸:成毛さん、渡部さん、西尾さんと私の非常に親しい人たちが登場しているのには驚きました。

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