SPECIAL TALK Vol.15

~最も大切なリーダーの素質は逆境でしか得られない、ハートの強さである~

金丸恭文氏 フューチャーアーキテクト代表取締役会長CEO

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。産業競争力会議議員、規制改革会議委員、内閣官房IT本部 本部員、経済同友会副代表幹事、NIRA代表理事を務める。

まず、人ありきの経営をネット時代のリーダーの覚悟

金丸:藤田流マネジメントについて、もう少し聞かせてください。自身のリーダーシップについては、どのようにお考えですか?

藤田:それこそ、金丸会長のような豪傑で強力な、組織をどんどん引っ張っていくようなリーダーシップとは違いますね。私自身は「人の力を最大限に引き出すこと」を第一に考えています。つまり、社員をやる気にさせ、働きやすい環境を整えることで業績を上げていく。たとえば本来の経営が、経営戦略や事業計画を立てて予算をとり遂行していくというものなら、私の場合は真逆です。事業内容は、能力の高い社員が面白がって取り組めるものにしようと決めています。最近、動画や音楽の市場に参入したのも、手を挙げる社員が多かったから。そういうやり方だから、社員たちが輝けるんじゃないかと思っています。

金丸:では、次世代のニューリーダーには、何が求められると思いますか?

藤田:リーダーの役割というのは、社員を目指すべき方向に引っ張っていくことであって、それは今後も変わらない、不変だと思うんです。しかし、いまや誰もがネットで意見を発信でき、ネットを通じてその人の頭の中まで知られてしまう時代であるということは、肝に銘じる必要があります。もはや曖昧なカリスマ性や虚像が通用する時代ではなく、すべてが見透かされる時代なのです。この時代に即したリーダーシップの在り方を、それぞれが模索しなくてはいけません。

大切なのはハートの強さ。積極的に逆境に挑むべし

金丸:サイバーエージェントは今年で創業17年になります。今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?

藤田:いま一番力を入れているのは、エイベックスとの共同事業である音楽配信サービス「AWA」と、テレビ朝日と合弁でやっている「Abema TV」です。日本でも定額制の音楽配信や映像配信のサービスを根付かせたいですね。私自身、「AWA」を利用するようになって、音楽を聴く時間がすごく増えました。昔の懐かしい曲もよく聴いていますし、新しい音楽との出会いの場にもなっています。

金丸:音楽と映像の分野が、藤田社長の新たな挑戦なのですね。

藤田:投資している額もこれまでより遥かに多いですし。

金丸:最後に、稀代の若手経営者として、また日本のITをけん引する存在として、いまの若い世代に最も伝えたいことは何ですか?

藤田:そうですね。ハートの強さを持ってほしい、ということでしょうか。仕事人として成長するためには、周囲に何を言われても動じない強いハートが必要です。ハートの熱さとは違います。熱さは短命で終わりますが、強さはそうじゃない。時間をかけて鍛えられるものです。この17年の間に、当社もネットバブルの崩壊や株価の暴落、事業の大転換などさまざまな浮き沈みがありました。その度に決断を迫られました。経営者の大事な仕事のひとつは決断することですが、決断力とは頭がいいとか悪いとかじゃなくて、心が強いか弱いかだと思うんです。目の前の数字に惑わされたり、周囲の意見に流されたりするのは、自分の心が弱いから。逆に強ければ、自分が正しいと信じた道を突き進むことができます。しかし、ハートの強さというものは簡単には得られません。逆境に立って初めて鍛えられ、そういう経験を重ねたハートの強い人が生き残っていく。だからこそ、若い人には失敗を恐れず、もっとリスクを取ってチャレンジしてほしいですね。

金丸:サイバーエージェントのビジョンでもある「21世紀を代表する会社を創る」。いまや実現に近いところまで成長を遂げられていると思いますが、その根底には、藤田社長のハートの強さがあったのですね。熱さでなく、強さ。はき違えてしまいそうですが、大きな違いです。今日は藤田社長の強さの根底を垣間見ることができました。誠にありがとうございました。


※ビジョナリー・カンパニー/ジム・コリンズ時代を超え際立った存在であり続ける企業18社を選び出し、設立から現在までの歴史を徹底調査。永続の源泉は「基本理念」であることを説いた名ビジネス書。

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